導入事例

3Dスキャナーで博物館・美術館の展示を鑑賞中心から体験型へと変革する


事例紹介

今回は、弊社⽇本3Dプリンター株式会社のお客様の中から、愛知県陶磁美術館のEinScan導⼊事例をご紹介させていただきたいと思います。

愛知県陶磁美術館の大西遼様、井上隼多様が3Dデータを活用した展覧会の展示を行う目的でEinScan Pro 2Xを導入しました。(※現在はEinScan Pro HDをご案内しています。)


展覧会概要

日本陶磁の源・陶邑窯

―猿投窯の前に立ちはだかった巨大な壁―

The Mother of Japan Ceramics: from the Suemura Kilns

2021年1月9日(土)~ 3月21日(日)

古墳時代に始まる国内最古の陶磁器―須恵器(すえき)。それまでの土器とは全く次元の異なる須恵器の登場は、日本史上最大のやきもの革命でした。この革命の地こそ大阪府の陶邑窯で、大和政権傘下の元、須恵器の生産を牽引し、時代の要望に答えながら、奈良時代に到るまで国内最大の陶産地として君臨しました。

本展では、陶邑窯の作品群を以下二つのテーマから紹介します。
①古代史の潮流をも読み解ける、陶邑窯のダイナミックな作風の軌跡に迫ります。
②陶邑窯に続き、やきもの界の主役へ躍り出る、当県の猿投窯の作品を加えることで、古代のやきもの産地の二大巨頭の魅力を見比べます。

陶邑窯を軸に古代のやきものの魅力に迫る、全国的にも類を見ない展覧会です。


導入目的

博物館・美術館業界では資料の研究目的から3Dスキャンが浸透しつつありますが、展示に3Dデータを活かすことにも注目が集まりつつあります。今回、2021年1月9日(土)~ 3月21日(日)愛知県陶磁美術館の企画展「日本陶磁の源・陶邑窯―猿投窯の前に立ちはだかった巨大な壁―」ですが、3D展示出品作品の3DデータをQRコードから読み取れるようにし、スマホ上で普段は見ることができない作品の裏面や背面も鑑賞可能にすることを目的としていました。


導入後のプロセスと新しい展示手法が誕生

EinScan Pro 2Xを使用して、事前に展示対象物をスキャンし、3Dデータ化作業を行います。完成された3DデータをGoogle Polyを使用してQRコードを作成しました。展示物をセットでQRコードを展示台に設置しました。普段は見ることができない作品の裏面や背面もQRコードを読み込んで鑑賞することが可能となり、しかも展示作品のあらゆる角度から見ることができます。

スキャン中

画像1:須恵器のスキャン中

スキャン結果

画像2:須恵器のスキャン結果

最終作業(QRコードによるデータ表示はGoogle Polyを使用)

画像3:最終作業
画像4:展示

この3D展示システムは好評であり、国立館をはじめ他館の関係者からも展示手法についての問い合わせがありました。


Raise3Dプリンターで古代の名品を体で感じるようになった

弊社日本3DプリンターよりRaise3Dプリンターを一台貸し出しして、EinScan3Dスキャナーで得た作品の3Dデータをもとに、3Dプリンターによって出品作品のレプリカを作成しました。また、展覧会の中でも、3Dデータを3Dプリンターの実演展示として印刷するイベントも行いました。

本イベントは訪れた業界関係者からも注目され、3Dデータと3Dプリンターの組み合わせが展示と教育普及活動において大きな威力を持つことが周知されました。なお、従来から作品の模造品(レプリカ)は博物館・美術館業界で広く活用されてきましたが、精巧なレプリカを作るには専門職に頼らねばならず、時間と経費の問題から気軽に発注することができませんでした。しかし、3Dプリンターは安価かつスピーディーにレプリカを量産できることから、イベントやワークショップでの活用についてもハードルが低く、博物館・美術館の展示を鑑賞中心から体験型へと変革する可能性も秘めています。当該イベントは中日新聞にも取材・掲載されました。

画像5:3Dプリントされた須恵器
画像6:3Dプリントされた須恵器
画像7:Raise3D Pro2
看板


EinScanへの評価と今後の期待

・低価格の3Dスキャナーで高精細の3Dデータを実現できて大変満足でした。

・壺の中にような閉塞空間も容易にスキャンできる技術がほしいです。これがあると考古学・美術といった分野への応用可能性が一気に広がります。

・3Dデータは高精細でしたが、テクスチャが荒いので、カメラ機能を向上させてほしいです。


日本3Dプリンターのサービスに対する評価

・当館の展示に、スキャン作業までいろいろご協力いただき大変感謝でした。

Raise3Dプリンターを貸し出ししていただき、体感性のある展示ができて本当によかったです。