コラム
3Dレーザースキャナーとは?基本的な原理や活用方法、特徴などを解説!
3Dレーザースキャナーは、物体や環境を高精度かつ迅速にスキャンし、そのデータを立体的なモデルに変換する機器です。ビジネスへの導入を検討しているものの、活用方法をイメージできない方も多いのではないでしょうか。本記事では、3Dレーザースキャナーの基本的な原理から活用方法、特徴まで解説します。
目次
3Dレーザースキャナーとは
3Dレーザースキャナーは、レーザーを使用して物体や環境の表面形状を非接触で取得する機器の総称です。土木・建築や工場設備など、周囲環境の形状を取得する目的で使用されるものと、手のひらサイズから自動車くらいまでの静止した物体の形状を取得する目的で使用されるものの2つがあります。
前者のタイプはスキャンしたい環境に設置し、その設置箇所から見える範囲の周囲の形状や起伏を取得します。建築現場や工場などでの環境モニタリングや計測などに活用できます。
一方、後者のタイプは作業者がスキャナーを手に持ち、対象物にレーザーを照射しながらスキャナーを動かすことで、対象物の形状全体を取得します。これにより、静止した物体の詳細な形状を手軽かつ迅速にキャプチャできます。
本記事では、特に後者に該当する「3Dハンディレーザースキャナー」に焦点を当て、詳しく解説します。
3Dレーザースキャナーで取得できる情報
3Dレーザースキャナーは、他の3Dスキャナーと同様に、数十万点を超える多量の点の座標値を記憶し、コンピュータ上に形状を表示したり、その点同士の距離から必要な寸法を計測したりできます。この高密度な点群データにより、対象物の細部や複雑な形状の精密な再現が可能です。
これらの点同士を結んで表面を構成するポリゴンを生成することで、3Dモデルデータが完成します。この3Dモデルデータは、3Dプリンティングやコンピュータグラフィックス(CG)など、多岐にわたる用途に活用されます。
点群が持つ情報
・座標値
点群が3次元空間上のどの位置に配置され、どのように表示されるかを示すための基本的な情報です。各点が持つ座標値には通常、X、Y、Zの3つの軸に関する値が含まれます。
・法線方向
法線方向は、各点が指し示す向きであり、周囲の点群の散らばりや、点群取得時の機器と点群の位置関係から計算されます。それぞれの点の外側(形状の外郭側)がどちらを向いているかを示します。
3Dスキャンソフトウェアから書き出したポリゴンが持つ情報
・表面積
各点が形成する小さなポリゴンの積算で、スキャン対象物の表面積の近似値を算出できます。
3Dレーザースキャナーの活用例
3Dレーザースキャナーは、産業や医療などさまざまな分野で活用されています。3Dレーザースキャナーの活用例について詳しく見ていきましょう。
製造した部品や設備の計測・測定
ハンディタイプの3Dレーザースキャナーは、その可搬性や取り回しの良さだけでなく、レーザーを使用しない他の方式のハンディ機と比較しても高い精度と正確性を備えています。計測(メトロジー)グレードに属する機器を使用すれば、0.1ミリ以下といった非常に高いレベルの形状差を取得できます。
製品や部品の品質検査、金型などの設備検査など、さまざまな用途に活用されています。
オーダーメイドの医療器具・部品の設計
微妙な誤差でも、全体を組み立てた際には大きな誤差につながる可能性があります。特に医療業界では、医療機器の製造において設計図面と実際に組み立てられた部品とのズレを確認することが重要です。この際、3Dスキャナーが有効活用されています。
3Dスキャナーは高い精度で物体の形状を短時間に計測できるため、製品の寸法や形状の正確性を迅速に評価できます。医療機器においては、微細な誤差が患者の安全性や治療の効果に影響を及ぼす可能性があるため、これらの誤差を事前に検知し、修正することが必要です。
図面のない製品から3DCADデータを作成(リバースエンジニアリング)
製造業界では、モック品を手加工で作成する際に図面が存在しないケースや、図面があっても量産に向けた修正を必要とする場面があります。このような状況においても、3Dレーザースキャナーを活用できます。
3Dレーザースキャナーは物体の形状や寸法を非接触かつ高い精度で計測できるため、図面のない製品からでも3DCADデータを作成することが可能です。これにより、手加工で作成されたモック品をデジタル化し、設計段階から正確な形状情報を取得できるのです。
また、3Dスキャナーから得たデータを活用して設計変更を行い、製品の量産に必要な金型を作成することも可能です。
ハンディ3Dレーザースキャナーで計測が難しいもの
以下に示すような対象物は、非接触で形状を取得する3Dレーザースキャナーでは形状の取得が困難です。
計測が難しいもの
・光吸収率が非常に高い黒色系の物体
・鏡面(ガラス鏡・鏡面加工された金属など)
・透明な物体(アクリル・ポリカーボネート・ガラスなど)
・スキャンにかかる時間内において形状が一定でないもの
ただし、これらの難易度の高い対象物に対しても、特定の手法を用いることで計測が可能になる場合があります。例えば、対象物の表面にスプレーや粉を塗布して表面反射を抑えたり、光吸収率を下げたりすることで、3Dスキャンができるようになることがあります。
3Dスキャン補助用のスプレーとして代表的な製品は、AESUBです。これは対象物に吹き付けることで光沢を抑え、3Dスキャンを容易にするもので、吹き付けた後に昇華して消失するため、対象物表面に粉や液体が残らず、拭き取りなども不要です。
ハンディ3Dレーザースキャナーを導入するメリット
ハンディ3Dレーザースキャナーを導入するメリットには、主に下記の4点が挙げられます。
・非接触で対象物の寸法を計測したり、形状を取得したりできる
・3Dデータ化したモデルは、任意の位置から断面図が作成可能
・3DCADや3DCGソフトウェアで作成することが難しい複雑な形状を取り込み可能
・一般的な計測器で計測が難しい複雑な形状の測定が可能
3Dスキャナーは、測定対象物に直接接触せずに3Dデータを取得します。対象物と離れた位置から寸法測定・形状測定が可能なため、建造物のような大きい対象物に向いています。
ハンディ3Dレーザースキャナーを選ぶ際のポイント
ハンディ3Dレーザースキャナーを選ぶ際のポイントは、以下の4点です。
・用途
・スペック(精度、解像度、スキャン速度、操作性)
・スキャン対象物のサイズ
・価格、サポート体制
3Dレーザースキャナーの選定においては、メーカーによる性能の差異の確認が重要です。精度基準の長さ、繰り返し測定の精度、点群のバラつきなどが異なり、これらが測定結果の品質に直結します。自動車業界では、さまざまなサイズの対象物をスキャンするため、求められる機器もさまざまです。例えば、ドアパネル程度のサイズの対象物をスキャンすることもあれば、車体全体のスキャンが必要なシーンもあります。適切なスキャナーを選ぶには、業界や用途に応じたサイズに対応しているかの確認が必要です。
価格についても、機能やデータの品質、解析速度が大きく影響します。高精度や高機能なスキャナーほど価格が高くなることが一般的です。また、3Dレーザースキャナーは精密機器であるため、定期的なメンテナンスや校正が不可欠です。これに加えて、トラブルが生じた際の迅速で信頼性のあるサポート体制も選定のポイントとなります。
おすすめの3Dレーザースキャナー
3Dレーザースキャナーの選定にあたり、おすすめの機器を3つ紹介します。
FreeScan UE Pro
FreeScan UE Proは、高精度かつ計測器レベルのスキャンを可能にする優れた3Dスキャナーです。軽量ながらも従来機種よりも高いスキャニング性能と大型対象物の正確な処理に優れています。搭載された13+5+1個のブルーレーザーとフォトグラメトリー機能により、スピード、正確さ、ディテールが格段に向上し、検査、リバースデザイン、アディティブマニュファクチャリングなど、多岐にわたるアプリケーションに対応できます。
0.02mmまでの精度を実現し、安定した性能で高精度なスキャンが可能です。高解像度のカメラと5本の平行レーザーを採用することで複雑な形状の対象物のスキャンを可能にし、細かなディテールも正確に取得します。
EinScan HX
EinScan HXは、LED光源とシリーズ初の青色レーザー光源を搭載し、大型な対象物も高い精度・高い解像度でスキャン可能です。この特長により、自動車などの大きな物体のスキャンが容易に行え、リバースエンジニアリングや製造業のデジタルトランスフォーメーションに役立ちます。
EinScan HXのソフトウェアは、初心者から経験者まで使いやすい設計で、人間工学に基づいたデザインです。また、優れたポータブル性を備えているため、持ち運びも容易です。
EinScan Pro HD
EinScan Pro HDは固定とハンディ両方のモードでのスキャンが可能で、広範なサイズの対象物に対応します。フルカラーのスキャンも可能であるため、リバースエンジニアリングや文化財のデジタルアーカイブ、XR技術の応用など幅広い用途に利用できます。新しい構造のプロジェクターを採用することで、ハンドヘルドHDスキャンモードでも従来の固定スキャンモードと同等の高解像度と高精度を実現しました。最小ポイント解像度は0.2mmで、ハンディスキャンでも固定スキャン時と同等の性能を発揮します。
ハンディ3Dレーザースキャナーで業務の精度と効率を高めよう
ハンディ3Dレーザースキャナーは、業務の精度と効率向上に寄与する先進的なツールです。異なるタイプの3Dスキャナーがあり、対象物のサイズや使用目的によって適したものを選ぶことが重要でしょう。ハンディ3Dレーザースキャナーは軽量かつ携帯性があり、大型対象物や複雑な形状の高精度スキャンが実現します。また、業務プロセスの効率向上や品質管理、リバースエンジニアリング、文化財のデジタルアーカイブなどさまざまな分野で活用可能です。
導入を検討する際には、精度・解像度、ハンディまたは据え置きタイプ、価格、サポート体制などを検討し、最適なツールを選択しましょう。
製品に関しては、こちらをご覧ください。
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