コラム
3Dスキャナーのスマホアプリとは?ハンディスキャナーとスマホアプリを徹底比較!
これまで、3Dスキャナーを利用するためには、高品質で高額な機材を揃えなければなりませんでした。しかし、最近ではスマホで3Dスキャンができるアプリも出てきています。うまく活用することで、より業務の効率化が図れるでしょう。
そこで本記事では、スマホで利用できる3Dスキャナーアプリの種類や特徴などを解説します。
目次
スマホの3Dスキャナー技術とは
スマホを用いた3Dスキャナーの技術には、LiDARスキャンとフォトグラメトリーがあります。
LiDARスキャンはレーザー光の反射で物や地形の距離を読み取り、フォトグラメトリーはさまざまな角度から撮影した写真を解析・統合することで3Dモデルを作ります。
まずは、それぞれの違いを確認しましょう。
LiDARスキャン
LiDARスキャンとは、赤外線である「LiDARセンサー」の反射から、対象物の距離を点群データで読み取る技術です。レーザーで計測した距離情報から、3Dモデルを作ります。
LiDARスキャンはスキャンのスピードが速く、その場で3Dモデルを作ることが可能ですが、利用にはLiDARセンサー搭載の、2020年以降に発売されたiPhone/iPadのProシリーズと専用アプリが必要です。
LiDARスキャンの使い方は、アプリを起動後、ゆっくりとスキャン作業を行います。ただし、透明なガラスやプラスチックなどの反射しづらい対象物では、うまくスキャンできない可能性があるため注意が必要です。
フォトグラメトリー
フォトグラメトリーとは、さまざまな角度から撮影した複数の写真を解析・統合して3Dモデルを作り出す技術で、測量や地形調査などで活用されてきました。撮影から処理までに、数分から数十分ほど時間がかかります。
フォトグラメトリーには専門的な機器は必要なく、専用のソフトウェア(アプリ)とカメラを搭載したスマホ、またはタブレットがあれば3Dスキャンできます。ただし、なかにはカメラ画質や性能が低いと十分な品質を得られない可能性もあるため、ある程度のスペックは必要です。
フォトグラメトリーの使い方は、対象物の全体が写るよう、少しずつ角度を変えて撮影します。照明や反射に注意し、台座も少し凹凸があるものを選ぶとよいでしょう。
LiDARスキャンとフォトグラメトリーを比較
LiDARスキャンとフォトグラメトリーはエクスポートのデータ形式が同じですが、比較すると以下の違いがあります。
比較項目 | LiDARスキャン | フォトグラメトリー |
特徴 | ・処理能力が高い ・簡単に3Dデータできる ・天候に関与されにくい | ・高精度で作りやすい ・広範囲でもキレイに仕上がる |
おすすめの対象物 | ・1m~数mほどの大型 ・空間 ・模様や表面の凹凸がある ・あまり複雑でない | ・サイズは問わない ・模様や表面の凹凸がある ・形状が複雑 |
アプリによるスマホ負荷 | 高い | 低い |
LiDARスキャンはアプリ使用時の処理負荷でスマホが熱を持ちやすいため、ケースは外しておくのがおすすめです。
一方、フォトグラメトリーはサーバー側で計算を行うアプリが多いため、スマホへの処理負荷は高くありません。ただし、サーバーでの計算がうまくいくように対象物や環境・写真などを整えなければならず、キレイにスキャンするには慣れが必要です。
従来、それぞれの初期費用は、LiDARスキャンで約数百~一千万円、フォトグラメトリーで約数十万円でした。それが、3Dスキャナーのスマホアプリ発展により、スマホ本体とアプリの料金のみに抑えられるようになっています。
無料で使えるアプリ機能もあり、コストを抑えて気軽に利用できます。
3Dスキャナーのアプリはどのようなものがある?
3DスキャナーのアプリはフォトグラメトリーとLiDARスキャンのどちらを利用したいか、精度とその他機能の充実性と優先度、AndroidとiPhoneどちらを使うかなどにより、選択肢が変わります。
ここでは、以下3つに分けておすすめのアプリを紹介します。
- 初心者向け
- 高精度
- 複数の測定モード
初心者向けアプリ
3Dスキャナーを初めて使う方におすすめの、操作方法がわかりやすいアプリは以下の2つです。
アプリ概要 | Polycam | WIDAR |
特徴 | ・高品質の3Dモデルを数分で取得 ・オフライン利用可能 ・データ作成回数に制限なし ・精度と解像度が高い | ・専門知識不要で直感的に修正できる ・スマホで完結できる ・15cm以上はLiDAR搭載のiPhone/iPadが必要 ・編集・シェア機能が豊富 |
価格(税込) | 無料~ エクスポート形式を増やすには2,200円/月、もしくは12,000円/年 | 無料~ エクスポート形式を増やすには1,000円/月、もしくは7,000円/年 |
対象機種 | iOS(16.0以降)・Android・Web ※LiDARスキャンはiOSのみ | iOS(14.5以降)・Android ※LiDARスキャンはiOSのみ |
初心者向けのAndroidアプリもありますが、LiDARスキャンにはiPhoneやiPadが必要です。また、付属する機能には料金が発生する場合も多いため、まずは無料の機能で使い勝手を試してみましょう。
高精度な3Dスキャナーアプリ
精度の高さで選ぶなら、以下の3Dスキャナーアプリがおすすめです。
アプリ概要 | 3D Scanner App | RealityScan | Scanat |
特徴 | ・テクスチャ作成、メッシュのスムーズ化、リメッシュなどの機能あり ・データをクラウドサーバーにアップロードすると、パソコンと簡単に共有できる ・処理速度が速く、解像度やマスク深度も調整可能 | ・高精度スキャンでリアルタイムに可視化できる ・撮影した角度をARで確認可能 ・プレビュー機能が充実 ・編集機能はなく、スキャン後はSketchfabにアップロード | ・住宅・建設業界向け ・手軽かつ瞬時に高精度でミリ単位の空間記録が可能 ・LiDARセンサー活用により現地調査や設計、施工管理も行える |
価格(税込) | 無料 | 無料~ 50件以上のアップロードは約2,200円~/月 | 13,200円~/月、132,000円~ /年 |
対象機種 | LiDARを搭載したiOS(14.1以降) | iOS(16.0以降) Android ※LiDARスキャンはiOSのみ | LiDARを搭載したiOS(15.0以降) |
出典:3D Scanner App、RealityScan、Scanat
高精度な3Dスキャナーはエクスポートまでの工程の少なさや処理速度の速さのほか、機能も充実している傾向があります。
なかでも「Scanat」は建設業界を中心とした空間を取り扱う業界で、現場を高精度に記録・計測できるアプリです。料金は発生しますが、国土交通省が運営する新技術情報提供システム「NETIS」に登録され、政府が工事の効率化を進めるために推進しています。
複数の測定モードが搭載されているアプリ
測定モードの多さでアプリを探している方には「Scaniverse」がおすすめです。
アプリ概要 | Scaniverse |
特徴 | ・測定モードを変えて小型から大型まで測定できる ・室内や空間・対象物の質感保持・結果などもすぐに確認できる ・切り抜きや画像補正、AR表示や対象物の計測も可能 |
価格(税込) | 無料 |
対象機種 | iOS(14.0以降)およびA12 Bionicチップ以降 ※LiDAR非対応でも使用可能 |
出典:Scaniverse
Scaniverseは対象の広さや機能面でみても、無料アプリのなかでクオリティが高いといえます。
現在はAndroid版がありませんが、公式サイトによると、将来的にはリリース予定です。
ハンディスキャナーとアプリを比較
3Dスキャナーを手軽に行うには、ハンディスキャナーを活用する方法もあります。アプリと特徴が異なるため、求める精度や用途、コストなどを踏まえて検討することが必要です。
ハンディスキャナーとアプリの違いは以下のとおりです。
比較項目 | ハンディスキャナー | アプリ |
精度 | 高い | 比較的粗い |
主な用途 | 品質検査・リバースエンジニアリング・文化財などのデジタルアーカイブ作成・寸法および形状測定・3Dプリンティング・CGモデリングなど | 趣味・シェア・投稿用動画・記録のほか、アプリにより現地調査・面積算出・作業検討など |
活用できる職種 | 建設コンサルタント・建築設計職・製造業・3DCGクリエイターなど | SNS運用者・動画制作者のほか、アプリにより建設コンサルタント・建築設計職など |
料金(税込) | 商品により約10万~数百万円 | 無料~ 高い精度と機能を求めるなら有料プランへの加入推奨 ※住宅・建築業界向けの「Scaniverse」なら13,200円~/月 |
アプリの3DスキャナーはLiDARスキャンに対応できる機種やカメラの性能など、スマホのスペックに左右されるため、精度の高い測定を求めるならハンディスキャナーがおすすめです。
近年では住宅・建築業界向けのアプリなども開発されていますが、一般的にはまだまだ「高精度」といえるアプリの種類は少ないのが現状です。どちらを選ぶかは、自社に適した機能とコストパフォーマンスを比較して検討しましょう。
ハンディスキャナーとスマホアプリを比較して使いやすいほうを選ぼう!
スマホを用いた3Dスキャン技術にはLiDARスキャンとフォトグラメトリーがあります。フォトグラメトリーは多くのスマホで利用でき、LiDARはより簡単かつ高速にデータ化が可能です。
アプリを導入する際は使用機材や用途などから、適する内容で検討する必要があります。アプリごとに特色や得意・不得意があるため、精度や機能範囲・使いやすさなどを考慮したうえで選びましょう。
また弊社では、より高精度・高精細なデータ取得を求める方のために「EinScan Pro HD」などの製品を提供しております。こちらもあわせてご覧ください。
ご予算やスキャン対象物に応じた機種選定のご相談も可能です。
製品に関するサポートなどについてはこちらからお問い合わせください。
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