コラム
寸法測定とは?目的とおすすめの種類を徹底解説
ものづくりや品質管理の現場において、製品の精度を保証し信頼性を高めるために不可欠な「寸法測定」。しかし「具体的にどのような目的で行うのか?」「どのような種類の測定器があり、どう選べば良いのか?」など、疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本コラムでは、寸法測定の基本的な内容から、その重要性、さらには代表的な測定器の種類とそれぞれの特徴、選び方のポイントまで解説します。
目次
寸法測定とは?

寸法測定とは、対象物の長さ、幅、高さ、角度、直径、深さといった幾何学的な大きさを、専用の測定器や測定機を用いて定量的に把握することを指します。
単に「測る」という行為だけでなく、測ることで設計図面や仕様書に記載された基準値に対して、実際に製作された製品や部品がどの程度の差異があるのかを数値で明確にし、その製品が要求される品質基準を満たしているか否かを判断するための重要な手段です。
ものづくりの現場においては、部品の組み立て精度や製品の性能、安全性などを保証するために、この寸法測定が不可欠な工程となります。測定結果は、品質管理、工程改善、不良品の早期発見、さらには新しい製品開発の基礎データとしても活用されます。
寸法測定を行う目的
寸法測定は、ものづくりのあらゆる段階で、様々な目的を持って実施されます。単に数値を測るだけでなく、その結果を基に品質の維持向上や生産性の改善へと繋げることが重要です。目的を達成するために、適切な測定器を選定し、正しい方法で測定を行い、得られたデータを有効に活用することが、ものづくりにおける競争力を高める上で極めて重要となります。
寸法測定器の種類を紹介
寸法測定には、測定する対象物の形状、大きさ、求められる精度、作業環境などに応じて様々な種類の測定器が用いられます。ここでは、ものづくりの現場でよく利用される代表的な寸法測定器を紹介します。
これらの測定器はそれぞれに得意な測定があり、一長一短がありますので測定の目的をよく理解し、最適な測定器を選定することが重要です。
ノギス
最も身近で基本的な測定器として挙げられるのがノギスです。一本で外側、内側、深さ、段差といった多様な箇所の測定が可能で、扱いも比較的簡単なため製造現場の必需品と言えるでしょう。一般的なノギスの精度は0.01mmから0.05mm程度の細かさまで測定可能です。

マイクロメーター
ノギスよりも一段高い精度での測定を実現するのがマイクロメータです。主に外径や厚み、あるいは専用の機種を用いれば内径や深さなどを0.001mmから0.01mm程度の精度で測定できます。測定箇所に応じて外側用、内側用、深さ用、棒形など様々な種類が存在します。

指示測定器
対象物の絶対的な寸法だけでなく、平面度や平行度、振れといった幾何公差、あるいは基準面からの高さや深さの微妙な差異を精密に知りたい場合に活躍するのがダイヤルゲージやテストインジケータといった指示測定器です。単独で寸法を測定するよりも、基準となる要素との差を比較測定する際に多く用いられ、0.001mmから0.01mm程度の精度で変位を読み取ることができます。

画像寸法測定器
画像寸法測定器は、カメラで対象物を撮像しその画像データから寸法を自動で解析、測定します。ステージと呼ばれる専用台に対象物を置くだけで、複数の箇所を一度に、かつ短時間で測定できる機種もあり、特に小さな部品や複雑な形状を持つ部品の多点同時測定、量産品の抜き取り検査や全数検査に適しています。非接触であるため対象物を傷つけたり変形させたりする心配がなく、測定者による個人差も出にくいという利点があります。

三次元測定機
極めて複雑な形状を持つ対象物や、非常に高い精度が要求される測定には三次元測定機が用いられます。対象物に直接接触するか、レーザー光などを照射することで対象物の表面にある多数の点の三次元座標を取得し、寸法、位置、輪郭形状などを0.1μmから数μmオーダーという高精度で測定します。1度取得したデータを用いてCADデータと実測値を比較照合することも可能です。

従来の寸法測定器の課題点とは
長年にわたり、ものづくりの品質を支えてきたノギスやマイクロメータといった従来の寸法測定器ですが、現代の高度化・複雑化するニーズに対しては、いくつかの課題も明らかになっています。
主に挙げられるのは、測定精度が作業者の熟練度に左右されやすく、個人差も生じやすいという人的要因です。また、多数の箇所や複雑な形状の測定には多くの時間を要し、手作業によるデータの記録・管理も煩雑で非効率になりがちです。さらに、接触式の測定器では対象物を変形させたり傷つけたりするリスクがあり、自由曲面のような複雑な形状の正確な測定も困難な場合があります。
これらの課題は、より効率的で高精度、かつ作業者のスキルに依存しない測定技術への移行を促す要因となっています。
おすすめの寸法測定器
前述のような課題点から近年では三次元測定機が注目されています。その中から3Dスキャナーと呼ばれる非接触式の三次元測定機の特徴を方式別にをご紹介します。
ハンディタイプ

ハンディタイプ3Dスキャナーは、その手軽さと機能性で、多くの分野で活用が広がっています。まず、持ち運びが容易で、場所を選ばずに様々な対象物をスキャンできる高い機動性が挙げられます。大きな物や複雑な設置場所でも柔軟に対応可能です。
次に、操作が比較的簡単で、スキャン状況をリアルタイムで確認しながら効率的に作業を進められる点も魅力です。専門知識がない人でも扱いやすい機種が増えています。
また、大小さまざまな形状や材質の対象物に対応できる柔軟性も大きな利点です。これにより、工業製品から文化財、人体まで幅広い用途で活用できます。
固定式

固定式3Dスキャナーは、特に高い精度や安定した測定が求められる場面でその真価を発揮します。微細なディテールや複雑な形状も忠実に3Dデータ化でき、品質検査や精密部品の測定に不可欠です。
測定時の再現性の高さも大きな利点です。固定されているため測定中のブレがなく、常に一貫した条件下でスキャンできるため、信頼性の高いデータ取得が可能です。研究開発での精密な形状解析や、厳格な基準が求められる工業製品の寸法検査など、シビアな条件下で高いパフォーマンスを発揮します。
トラッカータイプ

トラッカータイプの3Dスキャナーは、広範囲な測定や自由な操作性が求められるシーンで特にその能力を発揮します。まず、非常に広い測定範囲を高い精度で測定できる点が大きな特長です。航空機や自動車の車体、大型機械など、巨大な対象物全体の寸法測定に最適です。
次に、トラッカーがスキャナヘッドやプローブの位置を正確に追尾するため、作業者は自由度の高い操作で、対象物の複雑な箇所にも容易にアクセスできます。これにより、入り組んだ部分の測定も効率的に行えます。
また、システム全体を測定現場へ持ち運んでセットアップできる優れたポータビリティと現場測定への適応力も魅力です。移動が困難な大型構造物を、その場で精密に測定することが可能です。
よくある質問
寸法測定に際してよくいただくご質問とその回答をご紹介いたします。ぜひ参考にしてください。
寸法測定とは何ですか?
寸法測定とは、簡単に言えば、「モノの大きさを測ること」ですが、ものづくりの現場では、製品が設計図通りに作られているかを確認し、品質を保証するために不可欠な作業です。
寸法測定の注意点は?
正確な寸法測定のためには、以下の点に注意することが重要です。
- ・環境を整える: 測定は、標準温度(20℃)に近く、清潔で振動の少ない環境で行うのが理想です。
- ・対象物を準備する: 測定する対象物の表面は清潔にし、測定環境の温度に十分に馴染ませてから測定します。
- ・正しい方法で測る: 測定箇所を明確にし、視差(見る角度によるズレ)に注意して読み取ります。信頼性を高めるため、複数回測定することも有効です。
- ・客観性を保つ: 思い込みを避け、測定器が示す値を客観的に読み取り、記録します。
これらの基本的な注意点を守ることで、測定の誤差を減らし、信頼性の高いデータを取得することができます。
まとめ

寸法測定は、ものづくりの現場において製品品質を保証するための基本であり、測定結果は工程改善や不良低減にも直結する重要なデータです。本コラムでは、寸法測定の定義や目的から、代表的な測定器の特徴、さらに3Dスキャナーのような先進的な測定機器の種類までをご紹介しました。
測定器の選定においては、対象物の大きさや形状、求められる精度、作業環境などを総合的に考慮することが不可欠です。また、近年は非接触・自動化・高精度といったニーズの高まりから、従来の測定器に加え、3Dスキャナーのような最新技術を導入する企業も増えています。
寸法測定の精度を高め、生産現場の品質管理や工程改善に活用するには、最適な機器の選定と正確な運用が鍵となります。ご不明な点や導入のご相談がありましたら、ぜひお気軽に弊社までお問い合わせください。以下バナーから、おすすめの3Dスキャナー情報をチェックしていただけます。こちらも合わせてご覧ください。
