コラム

デジタルアーカイブとは?メリット・デメリットや活用事例を解説

デジタルアーカイブは、資料やモノを半永久的に保存・保管する手法です。
今後、さまざまな業界や分野で広く活用されていきます。
すでに、あらゆる資源や文化がデジタルスキャンにより保存されて、管理され始めているのです。

本記事では、これからデジタルアーカイブの作成を担当される方に向けて、デジタルアーカイブの基礎的な知識やメリット・デメリット、活用事例などを解説します。

デジタルアーカイブとは

デジタルアーカイブとは、紙の資料や物理的なモノをデータ化して保存し、保管する方法のことです。

そもそもアーカイブは保存記録や公文書といった複数の意味を持った英単語ですが、デジタルアーカイブで使われる「アーカイブ」は保存記録という意味合いが強いといえます。

アーカイブ(保存記録)をデジタル化すると、紙やモノの物体のように劣化することがなくなり、半永久的に保存が可能になります。

たとえば、絵画や陶芸などの美術作品、企業活動の情報記録などをデジタルアーカイブすることで、半永久的に劣化せず、失われることのない情報として保つことが可能です。

Back of an adult person looking at renaissance style paintings in an old museum art gallery

デジタルアーカイブのメリット

資料やモノをデジタルアーカイブすることには利点があります。
ここでは、5つのメリットについてみていきましょう。

整理や検索がしやすい

デジタルアーカイブはデジタル化された情報であるため、コンピューターを使って整理したり検索したりしやすいというメリットがあります。

紙や物理的なモノを整理したり探したりする場合は、保管されている場所に移動するなどの手間がかかります。しかし、デジタルデータならば、デジタルアーカイブの種類やキーワードなどで整理して保存したり、並べ替えたりして管理ができるため、コンピューターの前から動かずに整理したり探したりできます。

たとえデータが乱雑に保管されていても、キーワード検索機能などで瞬時に目的のデータを見つけ出すことも可能です。また、タイトルやデジタル化された日時など、任意のデータで並び替えれば整理もしやすくなります。

データの共有が容易

デジタルアーカイブされた情報はデジタルデータなので、共有が簡単です。

たとえば、博物館や美術館の文化財などをデジタルアーカイブ化すれば、インターネットを介したオンライン展示会が可能です。
インターネット経由ならば場所にとらわれることもないため、世界中に文化財を公開して共有できます。

また、企業内の資料などをデジタルアーカイブ化すれば、インターネットを経由して自宅から情報を閲覧したり、編集したりすることもできます。データは同時に閲覧できますので、複数人が同時にデータへアクセスするといった使い方も可能です。

セキュリティには十分な配慮をしなければなりませんが、紙の資料や物理的なモノを共有するよりも、デジタル化されたデータの共有は容易だといえます。

次世代への文化継承ができる

デジタルアーカイブは基本的に劣化することがないため、保管機器の管理を十分に行えば半永久的にデータを保管できます。
現代の資料や美術品などを、世代を超えて伝えていけます。
つまり、文化を継承することが容易になるということです。

劣化や紛失を防ぐ

紙やモノは、時間とともに必ず劣化します。
また、紙やモノに触ったり、物理的に移動すれば壊れたり、紛失したりすることもあります。

しかし、データ化された情報は劣化することもなければ、紛失する可能性も低いため、半永久的に保管できます。

データを記録している機器が壊れた場合や、機器ごと紛失することも考えられますが、一般的にはデジタルアーカイブされたデータや、データを保管する機器を二重・三重にして管理を徹底します。

省スペース化が可能

モノとして保管する場合には、倉庫などの保管スペースが必要です。
モノが増えるほど、物理的スペースを広げていかなければなりません。

しかし、デジタルアーカイブならば、デジタル情報をコンピューターに保存すればよいので、物理的なスペースは必要ありません。

もちろん、デジタルアーカイブのデータを保管するサーバー機器やネットワーク機器を設置するスペースは必要です。
しかし、物理的なモノを保管するスペースよりも省スペース化できます。

デジタルアーカイブのデメリット

デジタルアーカイブにはさまざまなメリットがありますが、同時に欠点があることを知っておかなければなりません。
ここでは、デジタルアーカイブのデメリットについてみていきましょう。

データ消失のリスク

紙の資料や絵画や陶芸などの美術品は、破れたり壊れたり汚れたりしますが、完全に失われるリスクは低いといえます。
しかし、デジタルアーカイブはデジタル化されたデータです。
データは消失する可能性があります。

たとえば、デジタルアーカイブした絵画のデータが消えてしまえば、「絵画そのもの」が消失してしまいます。
デジタルデータは、コンピューターの不具合やヒューマンエラー、コンピューター機器の破損などで、データ自体が消失してしまうことがリスクです。

そのため、デジタルアーカイブされたデータは、バックアップを取るなどしてリスク分散を考えた管理をしなければなりません。

データ容量が増え続ける

デジタルアーカイブは、物理的なモノを置く必要がないため省スペース化に役立ちますが、デジタルアーカイブが増えるほどデータ容量は増え続けます。

データ容量が増加すれば、保存するストレージの容量も増やしていかなければなりません。
データはバックアップ管理が必要なため、たとえば1つのバックアップを取るならば、最低でも2つのストレージが必要です。

また、データ容量が増え続ければ、比例してコストも高くなっていきます。

権利侵害リスク

美術品や文書などのデジタルアーカイブは、多くの人が閲覧できるデータとして公開可能です。
この場合、著作権や肖像権といった各種権利の扱いについても気をつけなければなりません。

たとえば、美術品であれば著作権を明記する、人物が映り込んだ写真などでは肖像権を意識しなければならないということです。
著作権や肖像権、個人情報などの取り扱いには権利侵害のリスクがあります。

アーカイブの質をどこまで高めるか

書物は記載された情報に価値があるため、テキストとして保存するデジタルアーカイブに最も適しているといえます。

情報処理技術の進歩や、3Dスキャナーのような機器の登場によって、書物よりももっと情報量の多い、絵画や3次元的な立体までも、デジタルデータとして保管できるようになりました。

しかしこれら技術は、これからまだ発展する可能性があり、将来では現在よりももっと高解像で高密度な情報が取得できる可能性があります。

人が1点の美術品などの文化財から得ることのできる情報は、細かく見れば見るほど無限に近いほどに存在しうるため、将来的な技術の進歩に期待して、物理的な美術品などを破棄することはなかなか難しく、デジタルアーカイブの利点を100%活用することにはハードルがあります。

Dad and boy watching dinosaur skeleton in museum.

デジタルアーカイブの活用事例

デジタルアーカイブは、資料や文化財、企業のナレッジをデジタルデータとして保存・保管するほか、それらを活用することもできます。
ここでは、デジタルアーカイブの一般的な活用事例を見ていきましょう。

図書館

図書をデジタルアーカイブすることで、目的の図書があるのかどうか利用者が自身で探すことができます。

不特定多数が物理的に貸し借りする図書は、劣化や紛失などが起こりやすくなりますが、デジタルアーカイブされた図書をデジタル図書として閲覧できれば、物理的な図書のメンテナンスは不要です。

たとえば、著作権が切れている図書をすべてデジタルアーカイブにすることで、自宅からパソコンなどで閲覧することも可能になります。
これにより、図書館の職員は業務負担が軽減され、図書の劣化や紛失も防げます。

美術館や博物館

美術館や博物館に展示されている作品も、デジタルアーカイブを活用できます。

絵画や美術品をスキャンしてデータ化すれば、展示されている場所に足を運ぶことなく鑑賞できるようになります。
Webで展示会を開催することも可能です。

3Dスキャンされた美術品は、パソコンやスマートフォンなどでも360度の角度から閲覧できるため、ガラスケースに入っている実物の作品を遠くから見るよりも細かな部分まで鑑賞できます。

また、展示のたびに美術品を移動する手間や、その際に破損や紛失をするなどのリスクも軽減可能です。

企業

ペーパーレス化にともない、資料をデジタル化している企業も増えました。
過去に販売した商品や企画資料、図面や写真など、企業に関する資料や履歴を1つにまとめることを企業アーカイブと呼びます。

これも、デジタルアーカイブの一種です。

過去の資料などをすべてデジタル化することで、デジタルアーカイブとして管理しています。これらのデジタルアーカイブは、企業にとっての資産です。

デジタルアーカイブ作成に使用するスキャナーの選び方

デジタルアーカイブを作成するには、紙の資料や立体的なモノをスキャンする必要があります。
そこで利用されるのがスキャナーです。

スキャナーにはさまざまな種類があります。たとえば、複合機などに搭載されているスキャナーは、紙をスキャンしてデータ化できる身近な機器でしょう。

立体的なモノをスキャンするために必要なのは3Dスキャナーです。
3Dスキャナーは、物体の形状を3次元で把握してデータ化できるため、3Dデータとしてデジタルアーカイブができます。

たとえば、iPhoneでもLiDARスキャナーを使って簡単な3Dスキャンが可能です。
LiDARスキャナーについては「iPhoneのLiDARスキャナーで何ができる?対応機種や使い方などを解説 」もあわせてご覧ください。

3Dスキャナーには、固定式のモノやハンディタイプのモノもあります。
また、フルカラー対応かつデジタルアーカイブ向けのスキャナーなどもありますので、データ化する対象物によってスキャナーを選択しましょう。

適切なスキャナーでデジタルアーカイブを実行しよう!

デジタルアーカイブをすることで、資料や美術品などのあらゆる文化をデジタルデータとして半永久的に保存・保管できます。
デジタルアーカイブすることで劣化や紛失を防いだり、データを共有したり、文化の継承をしたりと、さまざまな利点があるのです。
デジタル化する対象物に適したスキャナーを使ってデータ化し、データ消失などのリスクに気をつけて管理をすれば、長期的な保管が可能になります。

弊社では、デジタルアーカイブに欠かせないスキャナーについて、高精度・高精細な3Dスキャナーの「EinScan HX」など、さまざまな製品を提供しております。

また、製品やサービスに関するサポートなどについてはこちらからお問い合わせください。

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