コラム
点群データとは?活用するメリットやデータの取得方法、活用事例について紹介!
昨今、技術革新によりさまざまな業界で数多くのデータが生み出されていますが、なかでも代表的なデータが「点群データ」です。
点群データとは、点の座標や色情報を3D空間上の膨大な点の集まりとして表現したもので、さまざまな場面で使われています。うまく活用することで仕事の精度やスピードなどが上がり、快適に仕事に打ち込めるようになるでしょう。
本記事では、点群データとはなにか、なぜいま注目されているのかを解説します。活用方法や取得方法も紹介するので、ぜひご覧ください。
目次
点群データとは
点群データとは、1行ごとの位置情報X、Y、Z(横、高さ、奥行き)と付随するラベルや色情報R、G、B(赤、緑、青)が、点として数百〜数千万単位で集まり構成されるデータです。点の集合体は画像としても視認でき、TXT形式やCSV形式でも表現が可能です。
データは、実際の物理形状を3Dスキャナーや測量用レーザースキャナーなどで測定して集められます。
現実世界の物体は、設計上平らに作られていても歪みや表面の粗さによる起伏が存在し、3Dスキャナーなどの機器はその形状を平面と認識できません。そのため、まず点群データと呼ばれる無数の点として、形状を取得する必要があるのです。
点群データの活用方法
多くのデジタイジング(デジタル化)技術では、物理的形状をコンピュータ上に取り込んで再現するために点群データを使用しています。しかし、3Dスキャナーや測量用レーザースキャナーが取得した三次元情報の点群を3D-CADや3DCGソフトウェアに読み込んで3Dモデル化するためには、データの変換なども必要です。
たとえば、二次元の三角形が集まって構成されたメッシュデータ(ポリゴンデータ)や、1つの面で形成されているサーフェスデータがそれに該当します。言い換えると、3D-CADや3DCGソフトウェアに3Dスキャンデータを持ち込む際には、点群データが活用されるケースが多いことを意味するのです。
また、大規模な工場に新たな設備を設置する場合、点群データのまま活用するケースもあります。現在の全体像を正しい配置と形状でコンピュータ上に再現して搬入経路や配管などをシミュレートするには、工場内にある全機材のCADデータを位置調整しながら配置しなければなりません。そこで、測量用レーザースキャナーで工場全体を測定した点群データを用いて空間をつくります。そこに新機材のモデルデータを配置することで、3Dデータ構築の手間を省けるでしょう。
ほかにも、工業分野における製品検査の工程で、点群データを使用するケースもあります。製品が許容できる誤差範囲で製造されているかを確認するために、検査対象のCADデータと完成品をスキャンして得た点群データを比較するのです。
点群データの取得方法
点群データを取得して3Dモデル化するためには、まずレーザースキャナーや3Dスキャナーで計測したあと、ノイズの除去や複数の点群データ合成、データ変換が必要です。
機器にはさまざまな種類があり、どれを選ぶかは対象物の規模により異なります。ここからは、対象物ごとにおすすめの取得方法を見ていきましょう。
比較的小型の対象物
人体から自動車程度までの対象物で点群データを取り込むには、3Dスキャナーを使用します。
3Dスキャナーには、固定タイプと小型で持ち運びできるハンドヘルドタイプがあります。自動車ほどのサイズであれば、ハンドヘルドで空間トラッキング能力を備えた3Dスキャナーがおすすめです。
また、人物の全身像や表情、工芸品など形状の正確性よりも色などを重視して活用する場合、フォトグラメトリー(SfM:Structures from Motion)を使用するケースもあります。フォトグラメトリーは、対象物の写真をさまざまな角度から複数撮影し、そのデータを解析・統合することで、立体形状を推定して3Dモデル化する手法です。写真ではなく、動画のフレームから同様の処理を行う場合もあります。
点群データの取得や3Dモデルの作成手法として、スマートフォンアプリなどでも提供されています。
建造物スケールの対象物
建物や土木基礎などの形状取得で点群データが必要な場合には、測量用に開発されたレーザースキャナーを用います。
多くの測量用レーザースキャナーには、レーザーを投射するヘッドと、その反射を捉えるカメラが搭載されています。レーザースキャナーを設置した位置を基準として、定められた範囲の3Dデータを取得し、これを繰り返すことで一塊の点群としてデータ取得が可能です。
また、レーザースキャナーをドローンに搭載し、建造物上空や室内空中からスキャンする方法もあります。危険な現場での計測も安全に実行でき、少人数でコストを抑えてデータ収集できるでしょう。
地形や大規模建造物
ダムなど広範囲の点群データを取得する場合も、ドローンを用いてレーザースキャンを使用したり、ドローンに搭載したカメラでフォトグラメトリーを使用したりすることが可能です。
また、さらに高い高度から航空機によるレーザースキャンを行う方法や、カーナビゲーションシステム用の三次元マップデータ構築などに使用されるMMS(Mobile Mapping System)と呼ばれる手法も使われます。MMSは、車両に取り付けた機器を用いて、走行中に周囲環境の形状を点群として取得していきます。
点群によるデータ取得のメリット
点群によるデータ取得には、以下のメリットがあります。
- 非接触で形状測定できる
- データ密度の調整でデータ量を最適化できる
- 3Dシミュレーションに活用できる
1つずつ詳しく解説します。
非接触による形状測定
光源やレーザーを照射して形状を取得する3Dスキャナーや測量用レーザースキャナーは、対象物への接触がなくダメージを与えづらい特徴があります。
また、点群を用いた計測は、以下のようなものでも測定可能です。
- 形の変わる樹木や湖面などの対象物
- ノギスやマイクロメーターでの計測が難しい小型の対象物
- プローブ接触による測定が難しい対象物
非接触で測定できる点群データでは、不定形なものであっても、そのときのボリューム感を含む形状を取得できる場合もあるのです。
データの密度が可変
点群データは取得する点の量がデータサイズに直結するため、対象物のサイズや求める解像度に応じて点群量の調整が必要です。このため、対象物のスケールに応じて点の密度を調整することで、データ量を最適化できるでしょう。
使用する3Dスキャナーや測量用レーザースキャナーによっては、対象物の特定箇所のみ点群密度を高められ、より正確なデータが取得できます。
3Dシミュレーションに活用できる
点群データで作成した3Dモデルをコンピュータ上に取り込むと、3Dシミュレーションに活用できます。
3Dスキャナーや測量用レーザースキャナーなどの機器が取り出した測定結果は、もっとも本来のデータに近い形式です。測定時の環境や設定による外れ値は含まれるものの、ソフトウェアによる加工がない分、高い信頼性をもつデータといえるでしょう。
シミュレーションや偏差測定などではその信頼性が重要であり、点群での取り扱いがメリットになります。
点群データをCADに使用する場合
点の集合体である点群データを、リバースエンジニアリングなどを目的に3D-CAD内で扱うためには、以下の変換プロセスが必要です。
- 点群を基に三角形や四角形で点同士をつなぐメッシュデータを生成
- メッシュデータ内の欠損を穴埋めなどで補填
- メッシュデータ内を平面、曲面などの要素ごとにグループ分け
- 要素ごとに数学的な表現で曲面を再現するサーフェスデータ化
- サーフェスのエッジ同士を接合してソリッドデータ化で体積情報を持たせる
これらの処理には、各ステップに応じたソフトウェアが必要となります。
点群データ活用の先進的な事例
点群データの活用事例は増えており、国や都道府県でもさまざまなプロジェクトが展開されています。
プロジェクトの例には、静岡県が2019年より「VIRTUAL SHIZUOKA構想」として取り組むプロジェクトがあります。航空機によるレーザー計測やMMSで得られた地形の点群データなどが公開されています。現在は一部地域を除く静岡県全域をカバーしており、自然災害による地形変化の前後比較や土木工事のICT化、景観や水害のシミュレーションといったデータが幅広く活用されています。
また、2020年には国土交通省のデジタルツインプロジェクト「PLATEAU(プラトー)」が始動しました。3D都市モデルの生成には航空測量から得た点群データが活用されており「CityGML」と呼ばれる言語で情報を埋め込むことで、地図上の建物などに意味を持たせています。
2022年には同じく国土交通省がMMSによる三次元点群データの有償提供を開始しており、今後さらなる活用拡大が期待されるでしょう。
広大なスケールをカバーする地形や都市形状にもさまざまな活用ができるよう、一次データに点群を使用したり、配布データとして点群を採用したりするケースが拡大しています。
点群データが近年注目される理由
近年、点群データが注目されている理由は、情報処理技術の向上により大規模な点群データを構築できるうえ、処理できる環境が可能になったためです。
もともと、大量の情報が含まれる点群は、欲しい情報を抜き出して処理するために求められる性能水準が高く、扱いづらいデータでした。しかし、コンピュータの性能向上とソフトウェアの計算効率の改善、大容量のデータを転送できる通信技術の向上により、プロジェクトの根幹となる地形や環境要素を点群データの処理でカバーできるようになりました。
また、仮想空間上に同じ環境を双子のように再現する「デジタルツイン」と呼ばれる考え方により、包括的なデータが世の中に求められていることも、注目される理由の一つです。デジタルツインは現実空間へフィードバックすることで、将来起こる変化にいち早く対応できると考えられています。
静岡県の「VIRTUAL SHIZUOKA構想」のように特定の領域をコンピュータ上で再現することで、現実では確認や検証が難しいさまざまな事柄のシミュレーションが可能です。計測年代ごとに保存することで時代の進行とともにさまざまな比較が容易になり、点群データは今後さらに用途を拡大していくでしょう。
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