コラム
3Dスキャナーの精度は高い?メリット・デメリット、選び方のポイントを紹介
3Dスキャナーは、現物をスキャンするだけで手軽に3Dデータ化でき、製品の改修、品質検査などものづくりの現場で幅広く活用されています。特に3Dプリンターとの連携は、製造業における開発サイクルの短縮やコスト削減に大きく貢献しており、その需要はますます高まっています。
しかし、3Dスキャナーを最大限に活用するためには、その「精度」が極めて重要な要素となります。スキャン精度が低いと、取得した3Dデータの品質も低下し、その後の設計や製造プロセスに悪影響を及ぼしかねません。
そこで本コラムでは、スキャナーの精度について詳しく解説します。どのような要素が精度に影響を与えるのか、精度の指標はどのように見ればよいのかなど、選定の際に役立つ情報をお届けします。
目次
3Dスキャナーにおける精度とは?

3Dスキャナーにおける精度をカタログなどで表記する際には、一般的にはVDI/VDE2634と呼ばれる規格の非接触式三次元測定器に対応した基準をもとに掲載されています。この基準における精度とは「測定した数値が現物に対して正しいかどうか」を示した数値のことです。
一方で多くの工作機における精度とは、「データに対してどこまで正しく加工できているか」という数値で認識されることが多いかと思います。
そのため、3Dスキャナーにおいてもこの「精度」という言葉を「どこまでの再現度でスキャンできるか」と認識されている方が多いですが、そういった意味の精度とは少し異なります。
解像度と精度の違い
3Dスキャナーにおいて「精度」と混同されがちなのが、「解像度」です。解像度とは、精度ではなく、どちらかと言うと「再現度」に近い値のことを指します。
3Dスキャナーとは、三次元座標データをポイント単位で取得していく機械です。このとき取得する点と点の間には一定の隙間が空きます。この点同士の距離を表したものが、解像度という数値です。
解像度の数値が細かいほど、つまり解像度が高いほど実物をより細かく再現できると言えます。2次元で考えた時も写真などに同じことが言えます。画像におけるピクセルの解像度が高いほど、実物に近い滑らかさで画像を表現することができますが、ピクセルの解像度が低いと、実物の細部まで再現することはできません。カタログで解像度は「ポイント間隔」や「3D解像度」と表記されていることが多いです。
カタログに記載される精度とは

カタログに書かれている精度は、先述した通りVDI/VDE2634規格に基づいたものです。この数値が細かいほど、実物の寸法に即したデータが取得できるということになります。また、ハンディタイプスキャナーのカタログには、もう一つ「被写体長精度」という数値の記載もありますが、これは「精度」と合わせて出てくる累積誤差の値です。
1メートルあたりどれくらいズレが生じるか、という位置合わせによる精度問題なので、大きい対象物を予定されている場合はこちらも併せて参考にすることをおすすめします。
対象物によってはカタログの精度が出ないことも
実際に3Dスキャナーを使ってみるとその精度は、カタログスペック通りにならない場合があります。その主な理由は、多くのスキャナーがVDI/VDE2634規格に準拠しているためです。この規格は、異なる解像度のスキャナーを公平に比較するために設けられています。
しかし、再現性の低いスキャナーでは、スキャンデータの端の部分が欠損しやすく、カタログスペック通りの精度が得られないことがあります。精度はスキャナーの性能だけでなく、対象物の形状にも大きく左右されます。
また、対象物の色や材質によってはスキャンデータの精度に影響を与えることもあります。このような場合は、対象物の表面に専用のスプレーを塗布し適切なスキャンを行うことで改善が期待できます。
スキャンする人のテクニックも必要
3Dスキャンを行う際には対象物のすべてを1度にスキャンしきることは難しく、スキャンデータ同士の合成が必要になってきます。このデータの合成を行う際、どうしても位置合わせの誤差が発生してしまいます。この誤差は、スキャン回数が少ないほど小さく抑えることができます。
逆に、スキャンの回数が増えれば増えるほど誤差が蓄積されて大きくなってしまうため、スキャンする人のテクニックも重要と言えます。3Dスキャンに慣れていない場合は、いきなり本番のスキャンを行うのではなく、何度か練習を重ねてコツを掴む必要があります。
3Dスキャナー校正について
3Dスキャナーをはじめとする精密測定機器の精度を保証するためには、定期的な校正が不可欠です。校正作業の信頼性を担保するために、国際的に認知された規格に基づいて実施されることが求められます。3Dスキャナーを評価する規格としてVDI/VDE規格と国際標準化機構が代表的に挙げられます。
VDI/VDE規格は、ドイツで制定された規格で3Dスキャナーの分野では、特にVDI/VDE 2634シリーズが光学式3D測定システムの受け入れ検査や再校正に関するガイドラインとして広く参照されています。前述の通り多くの3Dスキャナーの機能評価にも用いられます。
国際標準化機構(ISO)は、様々な分野における国際規格を策定しています。そのなかでも測定機器の校正に関しては、ISO17025は、校正機関の品質マネジメントシステムと技術的能力を規定する上で中心的な役割を果たし、校正機関としての環境管理について明記されています。そのためISO17025を取得した校正機関での校正が最も正しく性能評価することができます。
3Dスキャナーの3つのメリット

3Dスキャナーを使用することで具体的にどのようなメリットがあるのか、身近に無い方には想像が難しいかもしれません。ただ3Dデータが容易に取得できるだけにとどまらない実際の使用用途に基づいたメリットをご紹介します。
広範囲の測定ができる
3Dスキャナーは、広範囲の建造物や敷地を迅速かつ正確にスキャンできます。遠隔操作可能な機種もあり、高所や危険な場所の測定も可能です。一度の測定で広範囲のデータを取得できるため、測定時間を大幅に削減し、業務効率を向上させます。
安全に測定ができる
3Dスキャナーは、従来の測定方法と比較して、作業効率の向上とコスト削減に貢献します。オペレーターのみでデータ取得が可能なため、人員と作業時間を削減することができます。働き方改革が重視される現代において、これらの効果は大きな利点となります。
コスト削減が期待できる
3Dスキャナーは、従来の測定方法と比較して、作業効率の向上とコスト削減に貢献します。オペレーターのみでデータ取得が可能なため、人員と作業時間を削減することができます。働き方改革が重視される現代において、これらの効果は大きな利点となります。
3Dスキャナーの2つのデメリット

ご覧いただいているように3Dスキャナーは非常に便利な機器です。しかし使用にあたっては意外な落とし穴もあります。機器本体のスペックだけでは判断できないデメリットを確認しましょう。
データ処理が必要
多くの場合3Dスキャナーで取得したデータはそのままでは活用が困難です。
3Dスキャナーで取得したデータは点群という多数の座標点の集合であり、多くの場合、不要な部分の除去(ノイズ除去)や、他のソフトウェアで利用するためのデータ形式変換が必要になります。そのため実際のスキャンを行ってから、実務に活用できるまで若干のタイムラグが生じることをあらかじめ把握しておく必要があります。
本体以外にも導入コストがかかる
多くの工作機械と異なり、3Dスキャナーはあくまでデータを取得するための機械であり、取得したデータを、その後どのように活用するかが最も重要となります。
そのためデータ活用に必要なソフトウェア(計測や編集ソフト)なども同時に導入することになり、初期導入コストが多くなりがちです。
十分な精度の3Dスキャナーを選ぶポイント

3Dスキャナーを選定する場合、やはりできるだけ精度を出せるものを選びたいところです。実際にスキャナーを選定する際は、下記のようなポイントをおさえて選ぶと良いでしょう。
用途を明確にする
一般的に3Dスキャンする場合の用途として測定を目的とされることが多いです。測定用途での活用の場合、他の目的での使用に比べて要求数値が高くなります。
一方で測定目的でも大型の対象物の場合はそこまで高い精度が要求されない場合もあります。このように用途に合わせて最適な機種を選定することで高い費用対効果を得られます。
スキャン対象物の意匠を把握する
対象物のどこまでスキャンできるのか、細部までしっかりスキャンできるのか、などの性能を表した数値は、解像度にあたります。
この解像度と精度を正しく理解した上で、細かい凹凸をスキャンしたい場合などは、高解像度の機種を選定すると良いでしょう。
スキャン対象物の大きさを明確にする
スキャン対象物が大きい分、1メートルあたりの累積誤差が大きくなってしまいます。こうした時は、被写体長3D精度をしっかりと確認することが重要です。
一般的に、レーザー方式のスキャナーは被写体長に対する累積誤差が少ないため、2メートルを超えるような大きい対象物の場合は、レーザー方式のスキャナーが適していると考えられます
よくある質問
3Dスキャナーを検討される方々から頂くご質問の中から、より専門的で調べても答えの出ずらい内容をピックアップしてお答えいたします。
精度の基準はメーカーごとに異なる?
メーカーによって、点群のばらつき精度を精度と表記している場合や繰り返し測定した結果の平均誤差を精度としている場合などがあり、基準が異なる傾向にあります。そのため、高精度な測定をされたい場合はメーカーに問い合わせてみたり、展示会やショールーム見学で実際に現物をスキャンすることをおすすめいたします。
3Dスキャンは安全に実施できる?
3Dスキャナーにおいて危険視される点としては光源による人体への被害です。多くのハンディスキャナーにおいてはレーザー製品の安全基準における「CLASS Ⅱ」に準拠したブルーレーザーが採用されており、特に防護措置をする必要はありません。ただ、レーザーが出ている時に直視すると、目を傷める場合があるので、直視だけはしないようにしましょう。
まとめ

いかがでしたでしょうか。近年製造業において重要視されてきている3Dスキャナー、その精度について詳しくご紹介していきました。3次元でのデータの取り扱いが主流になった現代において、手軽に3Dデータが取得できるツールは今後更なる発展を遂げるとされています。目的に合わせてより良い機種を使用することできっと皆様の業務に役立つはずです。以下バナーから、おすすめの3Dスキャナー情報をチェックしていただけます。こちらも合わせてご覧ください。
