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形状測定機とは?接触式と非接触式の違いやメリット・デメリットを解説

ものづくりの現場において、製品の品質を保証し、競争力を高める上で「形状測定」は避けて通れない重要な工程です。その形状測定を担うのが「形状測定機」。しかし、一口に形状測定機と言っても、測定対象に直接触れる「接触式」と、レーザーやカメラなどを用いて非接触で測定する「非接触式」があることをご存知でしょうか?

それぞれの方式には、得意とする測定対象や精度、そしてメリット・デメリットが存在します。本コラムでは、接触式と非接触式の具体的な違い、それぞれの長所と短所を分かりやすく解説します。

形状測定機とは何か

形状測定機とは、物体表面の形状を正確にトレースすることで、輪郭形状を記録する装置です。

形状測定機は、大きく2つのタイプに分けられます。直接対象物の表面をなぞっていく接触タイプ、レーザー等の光の反射で表面形状をとらえる非接触式タイプの2つです。非接触式の形状測定機の場合、測定作業自体は比較的容易に行えますが、対象物の材質や形状に精度が左右されてしまいます。そのため、接触式の形状測定機の方が精度が高く測定の現場で主流とされています。

形状測定機の主な用途

形状測定機はそのデータ取得の容易さから様々な場面で活用されています。

用途1.測定

形状測定機は前述の通り、測定の場面において広く活用されています。中でも従来の測定器では計測が困難な自由曲面や中心点間距離の測定などの用途では特に活躍できます。

用途2.リバースエンジニアリング

データの残っていない古い製品などの製品形状のデータを取得し、その構造を調べたりして、製造方法や動作原理を調査する「リバースエンジニアリング」の用途でも活用されています。

形状測定機の種類

一口に形状測定機と言っても、その種類はいくつか種類があります。測定対象の大きさや形状、求められる精度、測定環境などによって最適な機種が異なるため、それぞれの特徴を理解することが重要です。ここでは、代表的な形状測定機として「接触式」と「非接触式」をご紹介します。

それぞれの測定機が得意とする測定対象や精度、測定範囲を理解することが、最適な一台を選ぶための第一歩です。これらの「接触式」と「非接触式」のメリット・デメリットについて、さらに詳しく掘り下げていきましょう。

接触式

接触式形状測定機は、スタイラスやプローブと呼ばれる部品を測定対象物に直接接触させ、その接触点の座標や変位を検出することで形状を測定します。高精度な測定が可能で、古くから信頼性の高い方法として広く利用されています。

非接触式

非接触式形状測定機は、レーザー光やカメラ(画像処理技術)などを用いて、測定対象物に触れることなく形状を測定します。ワークにダメージを与える心配がなく、高速な測定が可能な機種が多いのが特徴です。

接触式と非接触式の違い

接触式と非接触式の形状測定機には、それぞれ一長一短があります。「どちらが絶対的に優れている」ということはなく、何を、どのように測定したいのかという目的によって最適な選択肢は変わってきます。

  • ・精度最優先で、材質の影響を受けにくい安定した測定を求めるなら「接触式」
  • ・ワークへのダメージを避けたい、高速に測定したい、複雑な形状を捉えたいなら「非接触式」

といった大まかな判断軸を持つと良いでしょう。

接触式のメリット・デメリット

スタイラス(探針)を測定対象物に直接触れさせて測定する接触式。その長所と短所を見ていきましょう。

メリット

直接接触するため、測定点の位置情報を確実に捉えることができ、高い測定精度と信頼性が得られます。長年にわたり多くの現場で使用されてきた実績があり、測定原理も比較的シンプルで理解しやすいのが特徴です。その精度の高さから、JISをはじめとする多くの工業規格では、接触式の測定方法を基準としている場合があります。そのため、規格に基づいた検査や品質保証を行う上で有利になることがあります。

デメリット

スタイラスが物理的に接触するため、柔らかい素材の場合変形してしまうため測定が困難です。傷つきやすいデリケートな表面には傷や圧痕をつけてしまう可能性があります。

また、基本的に1点ずつスタイラスを接触させて測定するため、広範囲の面形状を把握するには時間がかかる傾向があります。特に複雑な形状の場合、測定プログラムの作成にも手間を要することがあります。

非接触式のメリット・デメリット

レーザー光やカメラ(画像処理)などを利用して、測定対象物に触れずに測定する非接触式。その長所と短所を見ていきましょう。

メリット

最大のメリットは、ワークに一切触れないため、傷や変形のリスクがないことです。柔らかいもの、粘着性のあるもの、微細で壊れやすいもの、衛生管理が求められる食品や医療品などの測定に適しています。カメラで一度に広範囲を捉えたり、レーザーで高速にスキャンしたりすることで、多数の測定ポイントを短時間で取得できる点も優秀です。

デメリット

光を利用するため、透明・鏡面・黒い素材などは、測定が困難です。これらを測定する際には専用の処理などが必要になります。また周囲の明るさの変化や、装置または測定対象物の振動が測定結果に影響を与える可能性があります。そのため、測定環境の整備が非常に重要です。

形状測定機を使用する際の注意点

高性能な形状測定機を導入しても、その取り扱いや設置環境、日々のメンテナンスが適切でなければ、本来の性能を発揮できず、正確な測定結果も得られません。最悪の場合、故障の原因となることもあります。

形状測定機を安全かつ正確に運用し、その能力を最大限に引き出すために押さえておくべき重要な注意点を、機種共通のポイントから接触式・非接触式特有のものまで具体的に解説します。

取扱説明書の熟読と遵守

これは最も基本的なことですが、メーカーが提供する取扱説明書には、安全な操作方法、日常点検、トラブルシューティングなどが記載されています。必ず熟読し、記載事項を遵守してください。

正しい操作方法の習得

自己流の操作や知識不足は、誤った測定結果を招くだけでなく、測定機やワークを破損させるリスクも伴います。必要に応じてメーカーのトレーニングを受講するなど、正しい操作方法を確実に習得しましょう。

定期的なメンテナンスと清掃

測定機の精度を長期間維持するためには、メーカーが推奨する定期的なメンテナンス(例:摺動面の清掃・給油、フィルターの清掃・交換など)が不可欠です。また、測定機本体や周辺を常に清潔に保つことを心がけてください。

異常発生時の迅速な対応

使用中に異音、異臭、エラー表示、急な精度不良などの異常を感じた場合は、直ちに測定機の使用を中止し、責任者に報告するとともに、メーカーや専門業者に連絡してください。無理な継続使用は、より深刻な故障につながる可能性があります。

安全への配慮

大型の測定機では、可動部に挟まれたり衝突したりする危険性も考慮し、安全柵の設置や立ち入り禁止区域の設定など、作業者の安全を確保する措置を講じましょう。必要に応じて保護メガネなどの安全装備を着用してください。

このほかにも設置環境への配慮や定期的な校正といった注意すべき箇所がたくさんあります。不安に感じた場合には必ず購入先の専任技術者に問い合わせましょう。

よくある質問

形状測定機の種類や特徴、使用上の注意点について解説してきましたが、ここからは導入や運用に関してよく寄せられる質問とその回答をご紹介します。

形状測定機の導入にかかる費用は?

形状測定機の導入費用は、その種類、サイズ、性能、メーカー、そしてオプション機能などによって大きく異なり、数十万円程度の比較的安価な卓上型のものから、数千万円、あるいはそれ以上する大型・高機能なものまで非常に幅広いです。

【導入コストの内訳例】

本体価格測定機そのものの価格です。
設置費用運搬、据え付け、初期設定などにかかる費用です。特に大型機や恒温室が必要な場合は高額になることがあります。
ソフトウェア 費用 測定プログラム作成用、データ解析用、統計処理用など、必要なソフトウェアのライセンス費用です。
周辺機器・治具費用測定対象物を固定する治具、校正用の基準器、除振台、パソコン、プリンターなどが必要になる場合があります。
トレーニング費用操作方法やメンテナンスに関するオペレータートレーニングの費用です。

具体的な費用については、自社の測定ニーズ(対象物、精度、測定頻度など)を明確にした上で、複数のメーカーや販売代理店に見積もりを依頼し、比較検討することをおすすめします。初期費用だけでなく、長期的なランニングコストやサポート体制も考慮して選定することが重要です。

形状測定機の「校正」は、自分でできる?専門業者に依頼すべき?

信頼性の高い「校正」作業は、原則として専門的な知識、技術、そして適切な設備(恒温環境やトレーサビリティが確保された基準器など)を持つメーカーや認定された校正業者に依頼することを強く推奨します。

ユーザー自身が行えるのは、日常的な簡易点検や、メーカーの指示に基づく一部の検証作業に留まることが一般的です。これらは「校正」そのものとは異なり、あくまで測定機が正常な状態を維持しているかを確認する作業です。

また認定された業者でない場合、測定器の精度を保証する校正証書の発行ができず測定結果に対してトレーサビリティを欠き信頼性が欠如してしまいます。もちろん、企業によっては社内に高度な計測管理部門を持ち、自社で一部の校正作業を行える体制を整えている場合もあります。しかし、多くの場合は外部の専門機関に委託する方が、コスト効率、信頼性、リスク管理の観点から合理的と言えるでしょう。

測定できる対象物の大きさは?

測定可能範囲は機種によってまちまちです。機種を使い分けることにより、小さいものは数㎜から大きいものは10m単位のものまで対応可能です。

要求精度によって対象物の大きさの限界が変わる点に注意が必要です。

非接触式形状測定サービスの流れについて知りたい

弊社にお問い合わせいただければ、専門のスタッフがご要望のヒアリングからお打ち合わせまで対応させていただきます。最適なプランが決まり次第お見積及び実際の測定を行っていきます。出張測定も行っておりますのでお気軽にお問い合わせください。

まとめ

ここまで形状測定機の基本から、接触式・非接触式の違い、それぞれのメリット・デメリット、導入時の注意点やよくある質問までを幅広くご紹介しました。測定の目的やワークの性質によって、最適な測定機の選択肢は変わります。

精度やスピード、安全性を重視するのか、あるいはコストやメンテナンス性を優先するのかなど、どの要素を最も重要とするかによって、最適な選定基準は異なります。ぜひ本コラムを参考に、貴社のニーズに最も適した形状測定機を選定いただければ幸いです。

導入をご検討の際は、弊社までお気軽にご相談ください。専門スタッフが用途やご予算に合わせて最適なご提案をさせていただきます。以下バナーから、おすすめの3Dスキャナー情報をチェックしていただけます。こちらも合わせてご覧ください。

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著者:日本3Dプリンター株式会社 技術部

さまざまな3Dデジタルソリューションを提案する日本3Dプリンター株式会社技術メンバーです。
3Dプリンター/3Dスキャナーのエキスパートとして、皆様に有益な情報を発信していきます。

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