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【タイプ別】業務用3Dスキャナーの価格相場と用途を比較|おすすめ3選

近年、製造業のDX推進や品質管理の高度化に伴い、3Dスキャナーの重要性はますます高まっています。業務用3Dスキャナーの導入を検討する際、「価格相場が分からない」「どの機種を選べば良いか判断できない」といった悩みはありませんか? 本コラムでは、業務用3Dスキャナーのタイプ別の価格相場と主な用途を徹底比較します。さらに、導入前に知っておきたい費用や選定のポイント、具体的なおすすめ機種まで解説します。自社に最適な一台を見つけるための参考にしてください。

業務用3Dスキャナーのトレンド

近年の業務用3Dスキャナー市場は、技術革新とニーズの多様化を背景に大きな変革期を迎えています。かつては自動車や航空宇宙といった一部の専門分野で利用される高価な機器とされていましたが、技術の進歩により、小型化・高精度化、そして低価格化が進んでいます。 この結果、製造業におけるリバースエンジニアリングや品質検査はもちろんのこと、医療分野での人体スキャンや文化財のデジタルアーカイブ、エンターテインメント業界など、活用の幅が急速に広がっています。 特に、AI技術を組み合わせることで、スキャンデータの自動処理や欠陥検出の精度が向上しており、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する上で不可欠なツールとなりつつあります。また、誰でも手軽に扱えるハンディタイプの登場により、専門家でなくても現場で手軽に3Dデータを取得できるようになったことも、市場拡大を後押しする大きな要因と言えるでしょう。今後も、さらなる性能向上と応用範囲の拡大が期待されています。

【タイプ別】業務用3Dスキャナーの価格相場

業務用3Dスキャナーは、求められる精度や用途に応じて、大きく2つのグレードに分類されます。一つは幅広い用途で活用される「プロフェッショナルグレード」、もう一つが品質検査で活躍する「メトロジーグレード」です。両者は精度と価格帯が大きく異なり、数百万円から数千万円までと幅があるため、目的に応じた選択が重要です。

プロフェッショナルグレードの特徴と用途

プロフェッショナルグレードは、性能と価格のバランスに優れた汎用性の高い3Dスキャナーのことを指します。メトロジーグレードには及ばないものの、0.1mm以下の十分な精度を持ち、価格帯も数十万円~数百万円と比較的手頃なのが特徴です。 ハンディタイプが多く、手軽に扱える操作性から、既存製品の形状を元にCADデータを作成するリバースエンジニアリング、製品開発の試作・設計、文化財のデジタルアーカイブ、医療やエンタメ分野まで、非常に幅広い用途で活用されています。

メトロジーグレードの特徴と用途

メトロジー(Metrology)とは「測定学」を意味し、μm(マイクロメートル)単位の極めて高い測定精度と再現性を保証する最高峰の3Dスキャナーです。価格は数百万円~数千万円以上と高価ですが、製品が設計図通りに作られているかを厳密に検証することが可能です。 主な用途として、自動車や航空宇宙産業における部品の品質検査、精密金型の寸法評価、設計CADデータとの比較分析など、わずかな誤差も許されない分野においてその真価を発揮します。製造ラインの品質を担保するための、まさに「測定器」としての役割を担います。

業務用3Dスキャナーと安価な機種の差

業務用3Dスキャナーとはその名の通り業務で用いるうえで支障のない精度と安定性が実現できる機種です。一方でそれ以外の安価な機種も市場には多く、魅力的に見えるのも事実です。業務用とそれ以外とではどのような差があるのでしょうか

3Dスキャナーの精度

業務用スキャナーと安価な機種との最も大きな違いは「精度」です。業務用、特にメトロジーグレードの機種は、厳密な検査を基に導き出された精度を安定して実現できます。またISO17025の規格に基づく校正証明書を発行することができます。これにより、測定結果に客観的な信頼性を生むことができます。一方、数万円から数十万円の安価な機種は、スペック上の最高精度はうたっていても、それを常に再現できるとは限りません。温度変化などの環境要因や使用者のスキルによって結果がばらつきやすく、厳密な寸法管理が求められる業務での使用は困難と言えるでしょう。

サービスの品質

導入後のサポート体制も、業務用と安価な機種では大きく異なります。業務用スキャナーは、メーカーや国内代理店による手厚いサポートが提供されるのが一般的です。導入時の操作トレーニングや設置サービス、定期的なメンテナンスや校正、故障時の迅速な修理対応、専門の技術者による電話やメールでのサポートなどが含まれます。これに対し安価な機種では、サポートはオンラインのフォーラムやコミュニティに限定されることが多く、専門的なトレーニングや迅速な修理は期待できません。業務で安定して運用するためには、このサービスの品質が非常に重要になります。

業務用3Dスキャナーの本体価格以外にかかる費用

業務用3Dスキャナーの導入を検討する際は、本体価格だけでなく、様々な付随費用が発生することを念頭に置く必要があります。初期設定やトレーニング費用、運用に不可欠なソフトウェアのライセンス料、定期的なメンテナンス費用など、トータルコストを把握した上で予算計画を立てることが、導入後のスムーズな活用につながります。

機器導入時の初期費用

3Dスキャナーを導入する際には、機器本体以外にもいくつかの初期費用がかかります。まず、高解像度の3Dデータを快適に処理するための高性能なワークステーション(PC)が必須です。スペックが不足していると、データ処理に時間がかかり業務効率が著しく低下します。また、スキャナーを設置するための専用の台や治具、場合によっては設置場所の環境整備(温湿度管理や除振など)が必要になることもあります。これらの周辺機器や環境構築費用も事前に見積もっておきましょう。

導入費用

ここでの導入費用とは、主に人的なセットアップやトレーニングにかかるコストを指します。専門の技術者による機器の設置や初期設定、精度を保証するための校正(キャリブレーション)作業費用が発生します。さらに、スキャナーやソフトウェアの操作方法を習得するためのトレーニング費用も重要です。導入後の活用度を大きく左右するため、担当者がしっかりと使い方をマスターするための講習会や出張トレーニングは、必要な投資と言えます。

消耗品

3Dスキャナーの運用には、スキャン精度を維持・向上させるための消耗品が必要になる場合があります。代表的なものが「マーカーシール」です。これは、スキャナーが位置を正確に認識するための目印となるシールで、特に大型の対象物や特徴の少ないのっぺりとした形状のものをスキャンする際に使用します。また、光沢のある対象物や黒い対象物はレーザー光が乱反射・吸収されてしまいスキャンが安定しません。こういったときに用いられる一時的に表面に白い粉を吹き付ける「現像スプレー」もよく使われる消耗品です。

ソフトウェアのライセンス

3Dスキャナーで取得した点群データは、そのままでは活用が難しく、専用のソフトウェアで編集・加工(ノイズ除去、メッシュ化、サーフェス化など)する必要があります。このソフトウェアのライセンス費用が別途必要になります。ソフトウェアはスキャナーに付属している場合もありますが、より高度な編集や検査、リバースエンジニアリングを行うには、高機能な有償ソフトウェアの導入が不可欠です。ライセンス形態も、一度購入すれば永続的に使える「買い切り型」と、年単位で費用が発生する「サブスクリプション型」があります。

サポート費用

精密機器である3Dスキャナーの性能を長期的に維持するためには、保守・サポート契約が重要になります。契約には、機器の精度が規定内に収まっているかを確認・調整する定期的な校正(キャリブレーション)サービスや、万が一の故障時に迅速に対応してくれる修理サービスが含まれます。また、操作方法が分からなくなった際の電話やメールでのテクニカルサポートも業務を円滑に進める上で心強い存在です。

業務用3Dスキャナーの欠点

高精度な3Dデータを取得できる業務用3Dスキャナーですが、万能ではありません。一般的に、透明なガラス製品、鏡のような光沢面、光を吸収してしまう黒色の物体は、レーザー光が正しく反射しないためスキャンが困難です。この場合、前述の現像スプレーを塗布するなどの前処理が必要になります。また、導入には高額な初期投資とランニングコストがかかる点や、取得した大容量の3Dデータを処理するための高性能PCと専門的な知識が求められる点も、導入のハードルとなる可能性があります。

業務用3Dスキャナーを選ぶ際のポイント

業務用3Dスキャナー選びで失敗しないためには、導入後の活用イメージを具体的に持つことが最も重要です。「何を、どのくらいの大きさで、どのくらいの精度でスキャンしたいのか」を明確にしましょう。その上で、予算や操作性、サポート体制などを総合的に比較検討することで、自社のニーズに最適な一台を見つけることができます。

事業の用途に合わせて選ぶ

まずは、3Dスキャナーを導入する目的を明確にしましょう。例えば、製品の品質検査が目的なら、設計した3D CADデータとスキャンデータを比較し、誤差を色で可視化(カラーマップ比較)できる検査ソフトウェアとの連携が重要になります。既存製品から図面を起こすリバースエンジニアリングが目的なら、スキャンデータからCADデータに変換しやすいソフトウェアとの親和性が求められます。文化財のアーカイブであれば、質感や色情報を正確に取得できるカラー対応のスキャナーが適しています。このように、用途によって重視すべき機能や性能は大きく異なります。

スキャンサイズで選ぶ

スキャンしたい対象物の大きさは、選ぶべきスキャナーのタイプを決定する重要な要素です。数cm程度の小さな部品や宝飾品をスキャンするのであれば、高精細な据え置きタイプが最適です。一方、自動車のバンパーや家具、人体のスキャンなど、対象物が大きい場合や、持ち運んで様々な場所で使いたい場合は、ハンディタイプが適しています。スキャナーには一度にスキャンできる範囲(視野)が定められているため、対象物のサイズに合ったモデルを選ばないと、作業効率が著しく低下したり、そもそもスキャンが困難になったりします。

スキャン精度で選ぶ

スキャン精度は、業務用3Dスキャナーの価格を左右する最も大きな要因の一つです。μm(マイクロメートル)単位の極めて高い精度が求められる精密部品の検査と、形状が確認できれば良い試作品の評価とでは、必要な精度は全く異なります。製品カタログに記載されている精度仕様(例:0.02mm、20μmなど)を確認し、自社の要求精度を満たしているかを見極めましょう。ただし、不必要に高い精度を求めると、オーバースペックで高価な機種を選ぶことになりかねません。用途に応じた適切な精度を見極めることが重要です。

スキャナーの操作性や使いやすさで選ぶ

高性能なスキャナーを導入しても、操作が複雑で使いこなせなければ意味がありません。特に、専門の測定技術者だけでなく、現場の様々なスタッフが使用する可能性がある場合は、操作性の高さが重要になります。近年では、直感的な操作が可能なソフトウェアや、スキャン時の設定を自動で最適化してくれるモデルも増えています。導入前には、必ずデモンストレーションを依頼し、実際に機器に触れてみましょう。スキャンの準備からデータ取得、後処理までの一連の流れを体験し、ストレスなく使えるか、自社の運用フローに乗せられそうかを確認することが失敗しないための鍵となります。

業務用3Dスキャナーのおすすめ機種

ここまで解説してきた選び方のポイントを踏まえ、市場で評価が高く、様々な用途に対応できるおすすめの業務用3Dスキャナーを3機種ご紹介します。それぞれタイプや特徴が異なるため、自社のニーズに最も近いモデルを見つける参考にしてください。(※機種情報は2025年8月現在のものです)

プロフェッショナルおすすめ機種:「EinScanLibre」

「EinScan Libre」は、完全ワイヤレスで自由なスキャンを実現する、オールインワンタイプのハンディ3Dスキャナーです。本体に搭載された5.5インチのLEDディスプレイと高性能プロセッサにより、PCに接続することなくスタンドアロンでスキャンからデータ処理まで完結できます。青色レーザーと赤外線の2つの光源を搭載し、高精細な工業部品からフルカラーの人体スキャンまで、これ一台で幅広い対象物に対応。場所を選ばない高い機動性で、製造、医療、文化財、エンタメなど、あらゆるプロフェッショナルの現場で3Dデータ活用をサポートします。

メトロジーおすすめ機種1:「OptimScanシリーズ」

「OptimScanシリーズ」は、μm(マイクロメートル)単位の精度が求められる工業計測・品質検査に特化した、高精細ブルーライト3Dスキャナーです。5.0メガピクセルのデュアルカメラと最新のブルーライト技術を搭載し、最大で0.007mmという極めて高い測定精度を実現します。非接触で対象物の微細な形状や複雑なジオメトリを忠実にデータ化できるため、金型や精密部品、タービンブレードなどの寸法検査やリバースエンジニアリングに最適です。自動測定ソフトウェアと連携させることで、検査工程の効率化と高度化を強力に推進する、まさにインダストリアルグレードの測定ソリューションです。

メトロジーおすすめ機種2:「FreeScan Trakシリーズ」

「FreeScan Trakシリーズ」は、光学式トラッカーと連携することで、大型対象物でもマーカーを貼ることなく、高精度かつ効率的な3Dスキャンを実現するポータブル3Dスキャンシステムです。トラッカーがスキャナー本体の位置と姿勢をリアルタイムで追跡するため、スキャン中に作業者が動いたり、対象物が振動したりしても、精度の高いデータを安定して取得し続けることができます。最大で10mを超えるような大型の自動車や航空機部品、重機の寸法検査や品質管理に最適です。マーカーを貼る手間と時間を完全に排除できるため、特に大型部品を扱う現場の作業効率を劇的に改善します。まさに、大規模測定の常識を変える革新的なソリューションと言えるでしょう。

まとめ

本コラムでは、業務用3Dスキャナーのタイプ別の価格相場から選び方のポイント、具体的なおすすめ機種までを解説しました。3Dスキャナーは、品質管理の高度化や開発期間の短縮、業務効率化を実現する強力なツールです。 重要なのは、自社の「目的」と「対象物」を明確にし、それに合った「タイプ」「精度」「サイズ」の機種を選ぶこと。また、本体価格だけでなく、ソフトウェアやサポート費用を含めたトータルコストで導入を検討することが成功の鍵となります。ぜひこのコラムを参考に、自社に最適な一台を見つけてください。以下バナーから、おすすめの3Dスキャナー情報をチェックしていただけます。こちらも合わせてご覧ください。

3Dスキャナーとは?選び方とおすすめ機種を解説 -
3Dスキャナーとは?選び方とおすすめ機種を解説
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著者:日本3Dプリンター株式会社 技術部

さまざまな3Dデジタルソリューションを提案する日本3Dプリンター株式会社技術メンバーです。
3Dプリンター/3Dスキャナーのエキスパートとして、皆様に有益な情報を発信していきます。

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