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3Dスキャンを屋外で行う際の注意点と精度を高めるコツを解説

近年、建設現場の進捗管理や地形測量、文化財のデジタルアーカイブなど、様々な目的で屋外での3Dスキャンが活用されています。しかし、屋内と違って天候や太陽光といった環境要因に大きく左右されるため、屋外での3Dスキャンは難易度が高いのが実情です。そのため精度の高いデータを取得するにはいくつかの注意点とコツが必要となります。本コラムでは、3Dスキャンを屋外で行う際の基本的な注意点から、より精度を高めるための具体的なテクニック、そして屋外での使用におすすめの機種まで、初心者にも分かりやすく解説します。

3Dスキャンを屋外で行う目的

屋外での3Dスキャンは、幅広い分野でその価値を発揮しています。代表的な例として、建設・土木業界における地形測量や構造物の出来形管理が挙げられます。また、橋梁やダムといった大規模インフラの維持管理、災害現場での状況把握、歴史的な建造物や史跡のデジタル保存(デジタルアーカイブ)にも不可欠な技術です。これらの目的は、広範囲を迅速かつ正確にデータ化できる3Dスキャナーの特性を最大限に活かした活用事例といえるでしょう。

屋外で使用できる3Dスキャナーの特徴

屋外で使用される3Dスキャナーは、室内用とは異なるいくつかの重要な特徴を備えています。まず、雨や塵から精密な機械を守るための防塵・防水性能(IP等級で示される)が必須です。次に、広範囲を計測するために、機種によっては数十メートルから時には1km以上先まで届く長距離測定能力を搭載しています。また電源の確保が難しい場所でも稼働できるよう、高性能なバッテリーを搭載していることも特徴の一つです。さらに、最も重要なのが太陽光への耐性です。強い日差しの下でもレーザー光が正確に認識できるよう、特定の波長のレーザーを使用したり、特殊なフィルターを搭載したりする工夫が凝らされています。

3Dスキャンを屋外で行う際に注意すべきポイント

屋外での3Dスキャンを成功させるには、屋内にはない環境要因への配慮が欠かせません。特に「天候」「太陽光」「足場の安定性」は、スキャンデータの品質を大きく左右する三大要素です。これらのポイントを事前に理解し、対策を講じることで、失敗のリスクを大幅に減らすことができます。ここでは、それぞれ具体的に注意すべき点を掘り下げて見ていきましょう。

天気予報を確認する

3Dスキャナーは精密機器であり、水分や急な温度変化に弱いという側面があります。そのため、作業前日と当日の天気予報を確認することは最も基本的な注意点です。雨や雪は、機器の故障に直結するだけでなく、レーザーが雨粒に乱反射してしまい、ノイズの多い不正確なデータしか取得できません。また、強風も大敵です。三脚に設置したスキャナーが揺れると、スキャンデータにズレが生じ、精度が著しく低下します。風で樹木や看板などが揺れることも、データの品質を下げる原因となります。夏場の高温は機器のオーバーヒート、冬場の低温はバッテリー性能の低下を招く可能性も考慮し、最適な作業日を選びましょう。

日陰で作業する

3Dスキャンの精度を著しく低下させる要因の一つが、太陽光です。多くの3Dスキャナーが使用するレーザー光は、強い太陽光に含まれる赤外線などに紛れてしまい、スキャナーが対象物からの反射光を正しく認識できなくなることがあります。これにより、データが欠損したり、ノイズ(白飛びのような状態)が発生したりします。この問題への最も効果的な対策は、直射日光を避けて日陰で作業することです。曇りの日は、光が拡散されて影ができにくいため、3Dスキャンには最適なコンディションと言えます。晴天時に作業せざるを得ない場合は、日が傾き始める早朝や夕方を狙うか、テントやタープで簡易的な日陰を作るだけでも、データの品質は大きく改善されます。

安定性を重視する

屋外の地面は、室内の床のように完全に平坦で固いとは限りません。草地や砂利、傾斜地など、足場が不安定な場所でのスキャンは、精度の低下に直結します。3Dスキャンでは、複数箇所で取得したスキャンデータを後から一つに合成することも多く、その際にスキャナーの設置位置がわずかでもズレていると、最終的な統合データに大きな歪みが生じてしまいます。対策として、まず剛性が高く、不整地でもしっかりと自立する頑丈な三脚を選びましょう。設置場所はできるだけ固く平らな地面を選び、難しい場合は下に丈夫な板を敷くなどの工夫が有効です。さらに、三脚に重り(土嚢や機材バッグなど)を吊るして重心を低くすることで、風による揺れを抑え、安定性を格段に高めることができます。

屋外での3Dスキャンで精度を高めるコツ

基本的な注意点に加えて、いくつかのコツを実践することで、屋外での3Dスキャンデータは飛躍的に精度を高めることができます。これらのテクニックは、後工程であるデータ合成(レジストレーション)の作業を効率化し、より信頼性の高い3Dモデルを作成するために不可欠です。少しの手間を惜しまないことが、最終的な成果物の品質を左右します。

オーバーラップ部を多めにスキャンする

複数箇所でスキャンを行う際は、それぞれのスキャン範囲が十分に重なり合うように計画します。この重なり部分(オーバーラップ)が、データ同士を繋ぎ合わせる際の重要な「のりしろ」になります。オーバーラップが少ないと、ソフトウェアが共通点を認識できず、合成に失敗したり、精度が低下したりする原因となります。屋外では最低でも30%以上、できれば40~50%のオーバーラップを意識してスキャンポイントを配置しましょう。

マーカーを効果的に配置する

マーカーは、スキャン自体を行うためだけでなくデータ合成の精度を向上させるためにも重要です。これらをスキャン範囲内に複数設置することで、ソフトウェアはマーカーを基準点として各スキャンデータを正確に位置合わせします。ポイントは、隣り合うスキャン範囲から最低でも3つ以上の共通下マーカーが見えるように、全体にバランス良く配置することです。これにより、手動での位置合わせの手間も大幅に削減できます。

スキャン解像度を適切に選択する

やみくもに最高解像度でスキャンすると、データ量が膨大になりすぎてPCでの処理が困難になったり、作業時間が長くなりすぎたりします。目的の成果物に必要な精度を見極め、適切な解像度を設定することが重要です。広範囲の地形データが欲しい場合は低〜中解像度で、構造物の細かいひび割れなどを確認したい場合はその部分だけ高解像度でスキャンするなど、メリハリをつけるテクニックが必要となります。

反射・吸収しやすい素材への対策を行う

ガラスや光沢のある金属、黒い塗装面などは、レーザー光を乱反射させたり吸収したりするため、データがうまく取得できないことがあります。このような対象物には、専用の現像スプレー(反射防止剤)を薄く塗布することで、レーザーが認識しやすいマットな質感に変えることができます。スキャン後は簡単に拭き取れるタイプのものが多いため、対象物を傷つける心配も少ないです。この一手間がデータの欠損を防ぎます。

動くものを視野から外す

スキャン中に人や車が横切ったり、風で木の葉が大きく揺れたりすると、それらがノイズとしてデータに記録されてしまいます。可能な限り、人通りが少ない時間帯を選んだり、一時的に交通を整理したりする工夫が必要です。また、風の強い日は、植物などの揺れるオブジェクトが少ない場所を選ぶか、風が収まるのを待つ判断も重要になります。不要なノイズは後処理で消すこともできますが、手間がかかるため、スキャン時点で減らしておくのが理想です。

屋外での3Dスキャンにおすすめの機種

ここでは、屋外での使用実績が豊富で、多くのプロフェッショナルから信頼されている地上型レーザースキャナーの中から、代表的な2つの機種をご紹介します。それぞれに特徴があるため、目的や予算に合わせて最適な一台を選びましょう。

おすすめ機種1「Einscan Libre」

「EinScan Libre」は、屋外での機動力を最大限に発揮する、完全ケーブルレスのハンディ3Dスキャナーです。「自由」を意味するLibreの名前の通り、PCや電源へのケーブルが一切不要なため、電源確保が難しい建設現場や屋外の文化財調査など、場所を選ばずにその性能を発揮します。赤外線VCSEL技術により、マーカーなしでも迅速にスキャン可能。軽量設計で取り回しも良く、屋外の様々なシーンで複雑な形状を持つ対象物を手軽に高精度データ化できる一台です。

おすすめ機種2「Freescan TrakNova」

「FreeScan TrakNova」は、屋外の広大な現場での使用に適した光学トラッキング3Dスキャンシステムです。最大の利点は、風で剥がれたり汚れたりする心配のあるマーカーを一切使わずに、高精度なスキャンが可能なこと。トラッカーがスキャナーの位置を常時捕捉するため、基準点の設置が難しい屋外でも、自動車や重機といった大型対象物を自由に動き回りながら効率的にデータ化します。またトラッカー本体も大型3Dスキャンを行うこともできる3in1の多用途モデルです。

まとめ

本コラムでは、3Dスキャンを屋外で行う際の注意点と精度を高めるコツについて解説しました。屋外でのスキャンを成功させる鍵は、天候や太陽光、足場の安定性といった環境要因へ事前に対策することが必要不可欠です。さらに、オーバーラップの確保やターゲットの活用といった少しのコツを実践するだけで、データの品質は格段に向上します。ご紹介した機種情報も参考に、ご自身の目的に合った方法と機材を選び、精度の高い屋外3Dスキャンに挑戦してみてはいかがでしょうか。以下バナーから、おすすめの3Dスキャナー情報をチェックしていただけます。こちらも合わせてご覧ください。

3Dスキャナーとは?選び方とおすすめ機種を解説 -
3Dスキャナーとは?選び方とおすすめ機種を解説

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著者:日本3Dプリンター株式会社 技術部

さまざまな3Dデジタルソリューションを提案する日本3Dプリンター株式会社技術メンバーです。
3Dプリンター/3Dスキャナーのエキスパートとして、皆様に有益な情報を発信していきます。

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