コラム

人気記事

三次元測定機とは?用途やタイプ、測定手順を解説

ものづくりの現場において、製品の精度を保証するための三次元測定機は不可欠な存在です。近年では精度の高いさまざまな種類が登場しており、用途に応じて選択肢が広がっています。本コラムでは三次元測定機の基本的な仕組みをはじめ、種類別の多様な用途、そして後悔しないための選び方のポイントを詳しく解説します。三次元測定機の導入を検討している方や、選び方について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

三次元測定機とは何か

三次元測定機は、対象物の形状や寸法を3次元(X, Y, Z座標)で精密に測定するための装置です。英語では「Coordinate Measuring Machine」と言い、略して「CMM」とも呼ばれ、ものづくりの品質管理に不可欠な存在です。

CMMは1950年代後半から1960年代前半にかけて、イギリスのフェランティ社によって開発されました。機械による大量生産化に伴い、部品同士を正確に嵌合(かんごう)するための精密な寸法管理が必要となったためです。 日本においては1969年に初めて国産の三次元測定機が登場し、1973年には自動測定に対応したCMMがドイツで誕生しました。現在では寸法計測にとどまらず、非破壊検査や高速な3D形状データの取得へと進化を遂げています。

三次元測定機の特徴

三次元測定機は、従来の多くの測定用ハンドツールと異なり非常に自由度の高い測定を行えることにあります。従来のハンドツールでは目的に合わせてマイクロメーターやノギスなどを使い分ける必要がありました。一方で三次元測定機では複合的に測定を行うことが可能です。さらにデータ上の仮想点を用いた測定ができる点も大きなメリットです。例えば穴の中心点同士の距離などの測定ができる点で非常に有用です。

このように従来技術に対して、自由度が高く、かつ高精度に測定できることから、あらゆる測定を可能にする万能な測定器と呼べます。

三次元測定の用途

三次元測定技術は、その優れた性能から様々な面で製造業を支えています。実際の用途を既存技術と比較しながらその有用性を読み解いていきます。

●品質管理・検査

製造された部品が設計図通りの寸法や形状になっているかを精密に検査します。緩やかにカーブした曲面などは従来の測定器では評価が難しいですが、三次元測定機であれば容易に測定可能です。専用ソフトウェアと併用することで、測定結果を一括でデータ管理できます。また、生産工程の治具の摩耗検査や塑性変形試験の結果調査といった非破壊検査においても広く活躍しています。

●リバースエンジニアリング

図面がない既存の製品や部品を測定し、その3Dデータを作成します。このデータをもとに、複製や改良、解析などを行うことができます。また、組付けの差によって生じた微妙な個体差もデータ化できるため、現場に対して最適な治具の設計や、個人の手足にフィットする装具の設計などにも活用されています。

導入事例:EinScan HXを利用したカスタマイズ車両の作成―株式会社ダムド様

●デジタルアーカイブ

主に文化財などを3Dデータとして保存する際に活用されます。非接触式の機材を活用すると、重要な文化財に一切触れることなく高精細にデータ化することが可能です。他にも、自社製品の3Dデータを作成してARやVR、メタバースなどに活用されるケースもあり、手軽にデジタル資産を作成できるツールとして注目されています。

導入事例:EinScan、150年にわたるシンガポールの伝統工芸品をデジタル化

●3Dプリンター用データの作成

取得した3Dデータは、3Dプリンターでそのまま印刷することが可能です。取得した3Dデータにオリジナルの工夫や改良を加えることで、新たな付加価値を与えることもできます。ほかにも、破損状況の確認のために取得データを印刷し、実際の修復作業に向けたデモンストレーションを行う目的などにも活用されています。

三次元測定機の種類

三次元測定機は、測定点の取得の方法の違いによって接触式と非接触式と呼ばれる2つに分類されます。いずれの方式も得意不得意がありどちらの方が優れているといったものではありません。それぞれの特徴を理解し、目的に合わせて使い分ける必要があります。

接触式

三次元測定機の中で最も代表的なタイプです。プローブと呼ばれる、機械の先端に設置された球や針を測定対象に接触させ、その接触点の3次元座標を読み取ります。高感度の接触式センサーにより、きわめて高精度な測定が可能ですが、測定対象によっては測定に時間がかかる場合もあります。また接触に伴って形状が変形してしまったり、動いてしまうような物は測定対象として不向きです。形状の細部まで取得できるため成型品の深穴検査や刻印の凹凸などの測定も得意としています。接触式の中でもアーム型、門型など構造によってさらに細かく分類されます。

非接触式

レーザー光や特定の光パターンを対象物に照射し、カメラで捉えた光の変形や反射から3次元形状を読み取ります。カメラでとらえた範囲の点を一度に取得できるため、高速で広範囲のデータを取得でき、複雑な自由曲面の測定に適しています。光の反射を読み取る必要があるため、透明なものなどの光の反射に悪影響のある素材は測定対象として不向きです。また光の吸収が強い黒色な材質も苦手とされますが、高価格帯の機種に多く搭載されている光源は問題なくスキャン可能です。使い方によって種類はさらに分岐し、ハンディタイプや据え置きタイプがあります。

三次元測定機の形状タイプ

三次元測定機には、据え置き型からポータブル型まで様々な形状タイプが存在します。測定環境やワークのサイズ、求める精度に合わせて最適なタイプを選ぶことが重要です。ここでは、主な形状タイプとその特徴を解説します。

門型・ブリッジ型

定盤の上に門(ブリッジ)状の構造物を渡し、そこにプローブを取り付けた最も標準的な据え置き型の三次元測定機です。

  • 外見的特徴・機能: 門構造がX・Y・Z軸方向に精密に移動し、接触式プローブで座標を特定します。高い剛性と測定安定性を備えています。
  • ・活用分野: 専用の測定室に設置され、自動車部品や精密機械加工品などの超高精度な寸法測定・幾何公差測定に広く活用されています。

ハンディ型3Dレーザースキャナー

手で持って対象物にレーザーを照射しながら自由に動かして計測できる、ポータブルな非接触式三次元測定機です。

  • 外見的特徴・機能: 軽量かつコンパクトで、自由な角度からワークを測定できます。複雑な曲面も素早く高密度な点群データとして取得可能です。
  • ・活用分野: 測定室に持ち込めない大型構造物や自動車の車体、製造現場でのリバースエンジニアリング、品質検査などで高く評価されています。

🔗ポータブル3Dスキャナー一覧

トラッカー式3Dスキャナー

光学トラッカー(追跡カメラ)とハンディスキャナーを組み合わせた、最先端の非接触測定システムです。

  • ・外見的特徴・機能: トラッカーがスキャナーの位置をリアルタイムで精密に追跡するため、ワークにマーカー(基準シール)を貼る必要がありません。
  • ・活用分野: 航空宇宙部品、大型金型、船舶の成形型など、数メートルに及ぶ大型ワークのマーカーレス・高速スキャン測定に最適です。

🔗大型対応3Dスキャナー一覧

全自動デスクトップ型3Dスキャナー

自動回転ステージと高精度スキャナーが一体となった、卓上型の非接触式三次元測定機です。

  • ・外見的特徴・機能: 対象物をステージに乗せてワンクリックするだけで、全自動で多角度からスキャンが行われ、高精細な3Dデータが取得できます。
  • ・活用分野: 小型精密電子部品、金物、歯科用パーツなど、小さなワークの定量的かつ高効率な検査・リバースエンジニアリングに活用されます。

関連記事:業務用3Dスキャナーの選び方と活用方法

🔗デスクトップ型3Dスキャナー「Autoscan Inspec2

三次元測定機の一般的な測定手順

三次元測定機で正確なデータを取得するためには、事前の環境準備から実際の計測、データ出力までの一連の手順を正しく踏む必要があります。一般的な使用手順の流れは以下の通りです。

  • STEP1: 測定環境の整備とワークの順応
  • ・STEP2: センサーやプローブの較正(キャリブレーション)
  • ・STEP3: ワークの位置合わせ(アライメント)
  • ・STEP4: 座標軸(基準面・基準線・原点)の設定
  • ・STEP5: 実際の計測とデータ出力・評価

STEP1:測定環境を整える

三次元測定機で精密な測定を行うための最初のステップは、周囲の環境を適切に整えることです。

  • 手順と目的: 測定室の温度を20℃前後に一定に保ちます。金属などのワークは熱膨張によって寸法が変化するため、測定前に一定時間室内に放置する「温度慣らし(環境順応)」を行います。
  • ・確認すべきポイント: 測定機やワークにチリや埃、油分が付着しているとミクロン単位の誤差に繋がります。測定前に必ずアルコール等でワークの洗浄と定盤の清掃を行い、振動のない安定した環境を確保してください。

STEP2:較正(キャリブレーション)を行う

測定精度を保証するために、測定器自体の状態(基準位置やレンズの歪み)を正しく整えるステップです。

  • 手順と目的: 接触式であれば基準球(マスターボール)をプローブで測定し、スタイラス球体の正確な径や中心位置をシステムに認識させます。非接触式であれば、専用の較正ボードを規定の角度でスキャンして補正します。
  • ・確認すべきポイント: 較正を怠ると、プローブの摩耗やわずかな位置ズレがそのまま測定誤差として累積します。測定前やプローブ交換時、環境変化があった際には必ず行うべき極めて重要な作業です。

STEP3:位置合わせ(アライメント)を行う

測定対象物(ワーク)の実物と、PC内の測定ソフトウェア上の仮想空間における位置関係を一致させる作業です。

  • 手順と目的: 定盤に固定されたワークの特定の幾何要素(面や穴など)を計測し、仮想空間上の3Dモデルや設計データと重ね合わせます。これにより、測定機がワークの正確な配置向きを認識します。
  • ・確認すべきポイント: 位置合わせが不正確だと、その後の測定値がすべて傾いたりズレたりしてしまいます。実物の特徴的な形状やCADデータの基準点を正確に対応させることが成功の鍵です。

STEP4:座標軸(基準面・基準線・原点)を設定する

ワークに対して、すべての測定の起点となる「ベース(数理的基準)」を定義・構築するステップです。

  • 手順と目的: 一般的には「3-2-1ルール」などが用いられます。第1基準面(3点指定で平面を確定)、第2基準線(2点指定で軸方向を確定)、第3基準点(1点指定で原点を確定)を設定し、X・Y・Z軸の空間座標を完全に定義します。
  • ・確認すべきポイント: 図面の指示(データム指示)通りに座標軸を設定することが重要です。ここを間違えると、穴のピッチや幾何公差の計算結果が図面と食い違ってしまいます。

STEP5:実際に測定する

すべての段取りが完了した後、目的の寸法や幾何形状を実際に計測・評価するステップです。

  • 手順と目的: 設計図面や検査項目に従い、指定された寸法、角度、幾何公差(真円度、平面度など)を測定します。自動測定機の場合は、作成したティーチングプログラムを実行して自動計測を行います。
  • ・確認すべきポイント: 測定後は取得した点群や座標データを出力し、設計CADデータと照合してカラーマップ表示などで誤差を確認します。測定報告書(検査成績書)の自動作成機能などを活用して結果を記録・保管します。

企業が三次元測定機を導入するメリット

企業が三次元測定機を導入することには、品質管理および製造プロセスの両面において極めて大きなメリットがあります。 第一に、「測定精度の飛躍的な向上と標準化」が挙げられます。ノギスやマイクロメーターといった従来のハンドツールでは、測定者の熟練度や力加減によって結果にバラつきが生じがちでした。三次元測定機であれば、幾何公差を含めた高度な測定を客観的かつ超精密に行うことができ、誰が測っても同じ正確なデータを得られます。 第二に、「検具の削減と検査リードタイムの短縮」です。従来は製品ごとに専用の「検具(ゲージ)」を製作して形状確認を行うケースが多く、コストと保管場所が課題でした。CMMや3Dスキャナー型であれば、データ上で瞬時に照合できるため検具が不要になり、複雑な自由曲面の検査時間も劇的に短縮され、開発サイクルの高速化に貢献します。

三次元測定機のデメリットと対処法

三次元測定機には多くのメリットがある反面、導入にあたっていくつかのデメリットや留意点も存在します。 最大のデメリットは、「導入コストおよび維持コストの高さ」です。高精度な装置本体だけでなく、専用ソフトウェア、高スペックPC、さらに定期的な校正費用が必要です。この対策としては、自社のワークサイズや必要精度を過不足なく見極め、最適なミドルクラス機を選ぶことや、補助金の活用を検討することが有効です。 また、「設置環境の制約と運用スキルの必要性」も挙げられます。従来の据置型CMMは、厳密な温度管理がされた測定室が必要で、プログラム作成などの専門知識も求められました。これに対する効果的な対処法として、近年では「温度変化や振動に強いポータブル型・ハンディ型の非接触三次元測定機(3Dスキャナー)」を選択する企業が増えています。現場で手軽に扱えるため、環境制約をクリアしつつ運用ハードルを大きく下げることが可能です。

三次元測定機の導入事例

三次元測定機や高精度3Dスキャナーは、自動車、航空宇宙、精密金型など、品質に妥協が許されない多くの先進的な製造現場で導入されています。ここでは代表的な2つの活用事例をご紹介します。

EVバッテリー開発における変形・品質検査

次世代モビリティの開発現場において、EVバッテリーの品質管理は極めて重要です。負荷試験時にバッテリーパックにかかるわずかな歪みや膨張は、重大な事故の原因となり得ます。ある開発現場では、計測グレードのハンディ型非接触三次元測定機を導入。試験前後の筐体形状を丸ごと3DスキャンしてCADデータと高速照合することで、肉眼では見抜けないミクロン単位の三次元的変形をカラーマップで可視化し、開発の安全性向上と期間短縮に成功しています。

大型重機・船舶成形型の現物融合とリバースエンジニアリング

図面が存在しない過去の大型重機パーツや、職人の手作業で微調整された船舶用の大型成形型(モールド)の維持管理に三次元測定機が活躍しています。従来は大型ゆえに測定室への持ち込みが不可能でしたが、マーカーレスで広範囲を測定できるトラッカー式のポータブル三次元測定機を導入。現場でそのまま超高精度に形状を取得し、正確な3D CADデータを復元(リバースエンジニアリング)することで、治具の再設計や追加工の段取りを劇的に効率化しました。

三次元測定機の測定精度を高めるポイント

三次元測定機が持つ本来のスペック(カタログ精度)を発揮し、常に正確な測定結果を得るためには、いくつかの重要な運用ポイントを厳守する必要があります。代表的な3つのポイントを解説します。

厳密な温度管理とワークの環境順応

三次元測定において、最も精度に悪影響を及ぼすのが「熱」による影響です。測定機を構成する金属や大理石、そして測定対象物(ワーク)自身も温度変化によって必ず熱膨張や収縮を起こします。そのため、測定を行う部屋は原則として20℃(±1℃以内)に24時間一定管理されていることが理想です。さらに重要なのは、現場から持ち込んだワークをすぐに測定せず、測定室内の温度に完全に馴染ませる「環境順応(温度慣らし)」の時間を数時間以上設けることです。ワークの芯まで20℃に安定させることで、熱膨張に起因する重大な寸法誤差を排除することができます。

ワークの材質・形状に応じたプローブや光源の適正選定

測定対象物の物理的特性に合わせて、最適なアプローチ方法(ハードウェア設定)を選択する必要があります。接触式測定の場合、ワークが柔らかく変形しやすい樹脂やゴムであれば、接触圧の極めて低いプローブや非接触方式への切り替えが必要です。また、測定する穴の深さに応じてスタイラスの長さや球径を正しく選ばないと、たわみによる誤差が生じます。非接触式(3Dスキャナー)の場合は、ワークの表面が「黒色」や「光沢鏡面」であるとレーザーが吸収・乱反射して正確に点群を拾えません。高出力なブルーレーザー搭載機を選ぶか、反射を抑える現像スプレーを薄く均一に塗布するなどの適切な段取りが不可欠です。

日常的なキャリブレーションと国家標準へのトレーサビリティ

測定機の精度は、使用頻度や経年変化、周囲の微振動などによって少しずつ変化(ドリフト)していきます。これを防ぐために、測定作業を開始する前には必ず基準器を用いた日常的な較正(キャリブレーション)を実施し、機器のゼロ点やレンズの歪みを補正してください。また、社内でのチェックだけでなく、年に1回などはメーカーや専門機関による定期校正を受け、「校正証明書」を取得することが強く推奨されます。自社の三次元測定機が国家計測標準に正しく繋がっていること(トレーサビリティ)を公的に証明できるようにしておくことで、顧客に提出する検査成績書の信頼性を担保することができます。

SHINING3Dの3Dスキャナー

最後に弊社が取り扱う測定用ソリューションとしてSHINING3D社製の3Dスキャナーをご紹介します。

SHINING3D社製の3Dスキャナーは、前述の非接触型の三次元測定機に分類される機種です。その特徴はユーザビリティに特化した使いやすさと、安価ながら実務に最適な精度を両立するコストパフォーマンスの高さです。中でもFreeScanシリーズは、ハンディタイプであり非常に軽量です。フルワイヤレスタイプの機種もあり、さらに自由度の高い測定が可能です。ラインナップの中には、接触式と非接触式を両立させたトラッカータイプの機種もあり、豊富な選択肢からご用途に合わせた最適な機種をご提案可能です。ご検討の際にはぜひこちらのお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。以下バナーからは、おすすめの3Dスキャナー情報をチェックしていただけます。こちらもあわせてご覧ください。

3Dスキャナーとは?選び方とおすすめ機種を解説

まとめ

いかがでしたでしょうか。現代の製造業を支える三次元測定機について、その機能と用途を中心にご紹介していきました。3次元でのデータの取り扱いが主流になった現代において、手軽に3Dデータが取得できるツールは今後更なる発展を遂げるとされています。三次元測定機をお持ちの方はより良い活用を、まだお持ちでない方はこれを機にご導入の検討をしてみてはいかがでしょうか。

>>3Dスキャナーに関するよくある質問<<

日本3Dプリンター株式会社ロゴ

著者:日本3Dプリンター株式会社 技術部

さまざまな3Dデジタルソリューションを提案する日本3Dプリンター株式会社技術メンバーです。
3Dプリンター/3Dスキャナーのエキスパートとして、皆様に有益な情報を発信していきます。

関連記事

最新記事