コラム
3Dスキャナーとは?選び方とおすすめ機種を解説
昨今ものづくりで一般的になりつつある3Dスキャナー、一口に3Dスキャナーといっても様々なデバイスがあり、どれが自分に適しているのかわからないケースも多いと思います。このページでは、3Dスキャナーの選定基準や機能について解説し、おすすめの3Dスキャナーも紹介いたします。

3Dスキャナーとは
3Dスキャナーとは、現物を3Dデータに変換する装置です。現物を3Dデータに変換する方法は大きく分けて2種類あります。ピンのようなもので現物に触れ、触れた点を取り込む接触式スキャナーと、光やカメラなどを使用し非接触で取り込む非接触式スキャナーの2種類です。
接触式スキャナーと非接触式スキャナーの中でも細かな分類があり、それぞれに得意不得意があります。詳しくは表にまとめましたので、ご覧ください。
種別 | 構造 | 特徴 |
接触式 | アーム式(CMM) | 多関節のアーム先端に、ルビー球などの接触点を備えた測定用プローブを装着したもの高精度でかつ、アームの可動範囲で測定が可能なため、門型に比べて測定自由度が高い。 |
門型(CMM) | アーム式と同様の測定用プローブを、XYZの三軸方向に移動可能な門型の構造に取り付けたもの。非常に高い精度での測定が可能。設置場所にワークを持ち込む必要があり、可搬性はない。 | |
非接触式 | 固定式 | 規定位置に本体とワークを設置して使用する3Dスキャナー。ワーク側をターンテーブル等で回転させて全体をスキャンする場合もある。 |
ハンディ | 作業者が手に持って作業する。ワーク全体をスキャンする際にじゃまになる障害物や奥まった箇所に対応しやすい。また、可搬性が高く移動が不可能な構造物などの3Dスキャンにも向く。 |
関連リンク:3Dスキャナーとは?
非接触式3Dスキャナーの測定原理

非接触式3Dスキャナーの測定原理は、主に三角測量です。まず、3Dスキャナー本体に搭載されているプロジェクターからスキャン対象物に対してクロスレーザーや、縞模様などのパターン光をプロジェクションします。プロジェクションされたパターンを角度の決まったカメラで読み取ることで三角測量が成立し、3Dデータを取得するという原理です。
一般的に取得したデータは点群データとして保存されます。点群データは測定などで使用されるデータ形式ですが、汎用性が少ないという欠点もあります。汎用性のあるデータにするため、点をつなぎ合わせて三角形の集まりであるメッシュデータに変換し、書き出します。
関連リンク:3Dスキャナーが立体物を読み取る原理は?
3Dスキャナーで必要な機材

3Dスキャナーを運用する際に、ほとんどの場合3Dスキャナーだけ用意しても使うことはできません。使用する目的に合わせて付帯設備やソフトウェアを用意する必要があります。
用途によっては付帯設備が少なく済む場合もありますが、工業製品などをスキャンしたい場合はソフトウェアがほぼ必須になります。
PC
3Dスキャナーの多くは、PCと接続して使用する必要があります。スキャナーで読み込んだデータを計算・処理するのはPCとなるため、処理能力の高いPCが必要です。最近ではスキャナーに小型のPCを内蔵したものも増えてきていますが、スキャン後の処理にも必要なため必須の付帯設備です。
スキャンデータ用ソフトウェア
スキャンしたデータは、通常の3D CADに読み込んでも使用できない場合が多いです。3D CADに読み込む前に、スキャンデータ用のソフトウェアで処理をしていくことをおすすめします。スキャンデータ用ソフトウェアには、リバースエンジニアリングや測定などの工業向けソフトウェアがほとんどです。CGなどでは直接CGソフトウェアへ読み込むことも可能です。
3D CAD
スキャンデータを処理した後、リバースエンジニアリングを行う際は3D CADも必要です。リバースエンジニアリングソフトでほとんどのデータはリバース可能ですが、アセンブリなど複数のパーツを合わせることができません。実務にフィードバックする点で3D CADを用意することをおすすめします。
用途で選ぶ
リバースエンジニアリング

リバースエンジニアリングとは、設計からものづくりを行う通常のものづくりの工程とは反対に、ものから設計図を作成するという行為を指します。
現在のものづくりでは、職人による手作りを設計図にフィードバックする、粘土で作ったデザインから量産品を設計するなど、設計開発において欠かせないプロセスの一つとなっています。
リバースエンジニアリングにおいて3Dスキャナーは、実物に対して非常に高い再現性を誇るため、なくてはならない道具として使用されています。
測定・検査

3Dスキャナーは寸法検査や外観検査などにおいても使用することが可能です。3D CADデータに対して3Dスキャンしたデータを重ね合わせることで、成果物と設計データの差を見ることができます。
不具合箇所の判定にかかる時間が短縮されたり、複数の測定器を使用しなくても幾何交差の測定ができるなどのメリットがあります。
3D CADデータがない場合でも、スキャンデータ同士で位置合わせをすることもできるため、OK品に対してNG品を重ね合わせ測定を実施することや、時間経過に対しての変形量を測定することも可能です。
立体造形・CG・ゲーム

人体など、実際にあるものをスキャンしCGソフトウェアにインポートすることで、デジタル上で実物にあるものを編集することが可能になります。
立体造形においては粘土等で作成した原型をスキャンし、CGソフトウェアで分割するなどが可能です。
色データのスキャンも可能な機種があるため、色つきのデータをゲーム上のアセットとして使用するなど多種多様に使用することが可能です。
デジタルアーカイブ

文化財や遺物、遺構などをスキャンしデジタルデータとして保存・閲覧することも可能です。スキャンデータを元に色のない状態で評価したり、詳細にスキャンできるスキャナーで細かい測定を行うなど、文化財を傷つけずに実施することが可能です。
スペックで選ぶ
精度
3Dスキャナーの精度は、一般的にVDI/VDE2634 Part2,3を使用して算出されています。精度という言葉は、実物に対してスキャンデータがどれだけ正確に取得できたかを数値化したもので、数値の低いスキャナーほど実物との差異が少ないデータを取得できます。
精度の中でも「精度」と「容積精度」の2点が記載されることが多く、精度は球体の直径偏差を、容積精度は2つの球体の中心同士を測定し出た結果です。この球体の大きさや球間隔の長さは1スキャンあたりの視野範囲に依存します。実際に使用するときの精度を確認したい場合は、容積精度を確認する方が良いでしょう。
関連リンク:3Dスキャナーの精度とは?
解像度
解像度は、スキャンするときに取得する点のピッチ(点同士の距離)を表したものです。この数値が細かいほど、細かい凹凸やディティールを再現することが可能です。多くの3Dスキャナーでは解像度を変更することが可能なため、目的に応じて細かくも荒くもすることができます。
細かいデータほど細かい凹凸まで再現可能ですが、データが重たくなってしまうデメリットがあるため、必要な部分のみデータを細かくする機能を搭載したモデルもあります。
使いやすさ
選定において精度の次に重要なのは使いやすさです。デバイス本体では、重量やコンパクトさ、接続の簡単さなどが重要になります。昨今では、PCとの接続がワイヤレスのモデルや、スキャナー本体にPC機能を内蔵しスキャナーだけでスキャンできるモデルも出てきています。
デバイス以外では、スキャナーをオペレーションするソフトウェアの使いやすさが重要になります。直感的な操作が可能なのかであったり、インターフェースの見やすさ、教育のしやすさが重視されます。
精度の信頼性
精度の算出方法はVDI/VDE2634という規格で決まっていますが、その規格をしっかりと遵守して精度が算出されるかはスキャナーメーカーに委ねられてしまいます。そこで、国際規格であるISO17025施設での校正書発行が重要となってきます。
ISO17025はその施設がきちんと校正された測定器を使用しており、測定結果がトレーサブルである証明になります。つまり、国際規格で定められた正しい精度を算出できるということです。
測定で使用する際はこの項目を重視することをおすすめいたします。
対象物の性質で選ぶ
大きさ
3Dスキャナー1台だけで全ての対象物をスキャンできることはありません。大きさに合わせ、スキャナーを変える必要があります。大きな対象物にはハンディの3Dスキャナーを、小さな対象物には固定式の3Dスキャナーがより良いでしょう。特にサイズが大きくなるほど精度の担保が難しくなるため、より高価になる傾向があります。
形状の複雑さ
形状が複雑な人体などをスキャンする場合、スキャン対象物にマーカーを貼らなくてもスキャンできるケースがあります。一方、形状が単純な場合はマーカーを貼り付ける必要があります。また工業製品においては、入り組んだ形状やパイプ内部がスキャンできないという欠点が出てきます。本当にスキャンしたい部分がスキャンできるかは確認することをおすすめします。
材質(表面の光沢)
非接触でカメラを用いてスキャンしていくため、表面特性の違いはスキャン結果に大きな影響を及ぼします。光沢があるものや黒いものは青色レーザーを搭載した3Dスキャナーが良いでしょう。白色や灰色で、反射の少ないものは非常にスキャンしやすいため、LEDや赤外線でも問題なくスキャン可能です。もしLEDや赤外線の機種で光沢・黒色に該当するものをスキャンするときは、表面に白色の粉末を塗布してスキャンする必要があります。
色の再現性
3Dスキャナーは測定グレードのスキャナーほど、色をスキャンできるものが少なくなってきます。CGや文化財などのスキャンで色が必要な場合は、色をスキャンできるモデルを選ぶ方がいいでしょう。
注意するべきは、マテリアルの再現ができない点です。対象の色と形状は取得できますが、表面特性などのマテリアル(質感)は取得できません。
リバースエンジニアリングにおすすめの機種
EinScan Libre
PCレスでスキャン可能
高性能スタンドアロン3Dスキャナー
価格帯 | 200〜500万円 |
ハイブリッドブルーレーザーとLEDライトを搭載したワイヤレス・スタンドアロン3Dスキャナーです。
高速処理性能と高精度スキャンを実現。3つのスキャンモードで幅広い対象物に対応し、リアルな色再現性も備えています。

EinScan Pro HD
ハンディ/固定式の両方に対応
高い汎用性と扱いやすさを備えた3Dスキャナー
価格帯 | 100〜200万円 |
ハンディスキャンのほか、三脚に設置しての固定式スキャンにも対応。幅広いサイズの対象物に対応します。 フルカラーのスキャンにも対応しており、スキャンデータを活用したリバースエンジニアリング、文化財のデジタルアーカイブ、ARやVRなどのXRにも活用できます。

EinScan HX2
レーザー&LEDのハイブリッド光源
黒色/反射面にも強いハンディ3Dスキャナー
価格帯 | 100〜200万円 |
EinScan HX2は、13本のクロスブルーレーザーラインと、高速なスキャンを可能にする120fpsのフレームレートを備え、より微細なスキャンを実現します。ハイブリッドブルーレーザー光源とLED光源を搭載し、精度、汎用性、使いやすさの面で優れ、幅広い表面素材と大きな対象物にも対応可能です。

EinScan H2
フルカラーでより早いスキャンを
赤外線+LED搭載の低価格ハンディスキャナー
価格帯 | 50〜100万円 |
EinScan H2は、LED光源と赤外線のVCSEL光源を搭載したハンディスキャナーで、中~大型対象物のスキャンに適しています。 また、カラー情報を取得するRGBカメラを内蔵しているため、手軽にフルカラーデータの取得が可能です。

測定・検査におすすめの機種
Freescan Trak NOVA
高精度+小型+多機能でフレキシブルな測定へ
3 in 1のマルチモードワイヤレス3Dスキャナー
価格帯 | 500〜1000万円 |
オールインワンの3Dスキャンシステムとして複数のスキャンモードを搭載。小型のスキャナーであるTE NOVAと、大型スキャナーとトラッカーの2つの役割を備えたUE NOVAの二つのデバイスで構成され、3つのスキャンモードで手のひら大から超大型ワークまで高精度な測定が可能な3Dスキャナーです。

Freescan UE Pro2
計測グレードをワイヤレスで
レーザーハンディ3Dスキャナー
価格帯 | 500〜1000万円 |
高速なスキャンスピードと計測器レベルのスキャン性能を併せ持つ高精度ポータブル3Dスキャナーです。重量わずか950gの本体にワイヤレスモジュールを搭載し、ケーブルなしでシームレスなデータ転送が可能です。現場での作業や大型ワークのスキャンにも最適です。
