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光沢・黒色物体の3Dスキャン方法・対応機種を紹介

3Dスキャニング技術は製造業や教育、医療など幅広い分野で活用されていますが、多くのユーザーを悩ませるのが「光沢のある金属」や「真っ黒な樹脂パーツ」のスキャンです。これらは従来の赤外線や白色光スキャナーではデータの欠損が起きやすく、正確な計測が困難でした。本コラムでは、なぜこれらの物体がスキャンしにくいのか、その理由を解説するとともに、解決策として注目されている「ブルーレーザー光源」のメリットとおすすめの最新機種をご紹介します。

光沢・黒色物体の3Dスキャンにおける問題

3Dスキャナーは、光源を対象物に照射し、その反射光をセンサーで捉えることで形状を算出します。しかし、光沢面や黒色物体はデータ取得に十分な反射光を得ることができないのです。

光沢物体(鏡面): 表面が鏡のように光を反射してしまうため、センサーが「正反射」のみを拾い、形状を捉えるために必要な「拡散反射」が得られません。結果としてデータに穴が空いたり、ノイズが大量に発生したりします。

黒色物体: 黒は光を吸収する性質があるため、照射した光が十分に戻ってこないため、スキャナーが「そこに物体がない」と判断してしまいます。

これらの特性を持つワークを測定する場合、従来の手法では精度が著しく低下したり、計測自体が不可能になったりするケースが多々ありました。

光沢・黒色物体の3Dスキャン方法

光沢面や黒色物体の計測は、かつて3Dスキャンの「限界」とされてきました。しかし、技術の進歩により、現在は「運用による工夫」と「ハードウェアの進化」という2つのアプローチでこの課題を克服できるようになっています。

一つは、物理的に表面状態を変化させてスキャナーの苦手な反射特性を打ち消す方法。もう一つは、スキャナーが発する光そのものを環境光や吸収に強い波長へと変更する方法です。現場の許容度や求められる精度、タクトタイムに応じてこれらを使い分けることで、より良質な3Dデータを得ることができます。

スプレーの使用

最も一般的な方法として、対象物の表面に「昇華性スプレー」や「現像液」を吹き付ける手法が挙げられます。 表面を一時的に白い粉末でコーティングすることで、光の反射を均一(拡散反射)にし、黒色の吸収を防ぐことで容易にスキャンすることができるようになります。

メリット: 安価なスキャナーでも高精度な計測が可能になる。

デメリット: 洗浄の手間が発生する、精密部品では塗膜の厚みが誤差になる(数ミクロン〜数十ミクロン)、可動部や電子部品などスプレー厳禁のワークには使用できない。

ブルーレーザー搭載機種の使用

近年、主流となっているのが「ブルーレーザー(青色レーザー)」を搭載した3Dスキャナーの活用です。 青色の波長は赤色や白色光に比べて短く、エネルギー密度が高いという特性があります。

メリット: スプレーレスで光沢面や黒色を直接スキャンできる。

デメリット: 赤外線タイプに比べると機器の導入コストが高くなる傾向がある。

ブルーレーザーは、周囲の環境光(太陽光や照明)の影響を受けにくく、反射率の低い黒色面でも高コントラストで形状を捉えることが可能です。

ブルーレーザー搭載のおすすめ機種3選

FreeScan UE Pro2

産業用3Dスキャナーの決定版として高い評価を得た前モデルをさらに進化させた、メトロロジー級(計測グレード)のハイエンド機です。

特徴: 高出力なブルーレーザーを採用し、深穴や複雑な入り込みがあるワークでも強力にデータを取得します。また、フォトグラメトリ(写真測量)機能が強化されており、大型構造物でも累積誤差を極限まで抑えた計測が可能です。

適応性: 自動車パーツ、航空宇宙部品、大型金型など、精度とスピードが同時に求められる厳しい製造現場で圧倒的なパフォーマンスを発揮します。

    EinScan Libre

    PC不要のスタンドアローンでの操作性を追求しながら、ブルーレーザーの強力なスキャン性能を両立させた次世代モデルです。

    特徴: PCとの接続ケーブルから解放されることで、屋外や高所、入り組んだ設備内でのスキャンが劇的にスムーズになります。もちろん、ブルーレーザーモードを搭載しているため、スプレーレスで黒色・光沢物に対応可能です。

    適応性: フィールドワークでの文化財調査や、大きな構造物の周りを歩き回ってスキャンする必要がある現場に最適です。

      FreeScan Trak Nova

      マーカー(シール)を貼る手間を完全に排除した、トラッキング式のブルーレーザー3Dスキャンシステムです。

      特徴: トラッカーがスキャナーの位置を常に捕捉するため、ワークにターゲットシールを貼る必要がありません。ブルーレーザーの特性により、未処理の金属面や黒色塗装面もそのままの状態で高速にデジタル化できます。

      適応性: ターゲットシールの貼付・剥離が困難な大量の検査工程や、シールを貼ることが許されない精密な外観を持つ製品の品質管理に最適です。

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        日本3Dプリンター株式会社について

        日本3Dプリンター株式会社は、3Dプリンティングと3Dスキャニングの総合ソリューションカンパニーです。 2013年の設立以来、高性能な3Dプリンター、そして製造現場のDXを推進するSHINING 3D社の高精度な3Dスキャナーを提供しています。スキャナーのラインナップは、検査・測定、リバースエンジニアリングなど、幅広い製品を取り扱っております。 単なる製品販売に留まらず、お客様の課題解決に最適な機器選定、3Dスキャニング・3Dプリンティングの各工程における技術支援やコンサルティング、そして技術が定着するまでの手厚いアフターサポートまで、3Dデジタル技術の全方位をフォロー。製造業、研究開発、医療など幅広い分野で、お客様のイノベーションを加速させるソリューションを提供し、日本のものづくりを支援しています。3Dスキャナー・3Dプリンターの導入、活用でお困りのことがあれば、ぜひご相談ください。

        まとめ

        光沢物や黒色物体の3Dスキャンは、かつてはスプレー処理が必須の困難な作業でした。しかし、最新のブルーレーザー搭載機を活用することで、そのハードルは劇的に下がっています。作業効率を上げ、ミクロン単位の精度を追求するなら、ブルーレーザー搭載機への投資は非常に効果的です。

        自社の用途に最適な機種がどれかお悩みの方は、ぜひ一度、日本3Dプリンター株式会社へご相談ください。以下バナーから、おすすめの3Dスキャナー情報をチェックしていただけます。こちらも合わせてご覧ください。

        3Dスキャナーとは?選び方とおすすめ機種を解説 -
        3Dスキャナーとは?選び方とおすすめ機種を解説

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        著者:日本3Dプリンター株式会社 技術部

        さまざまな3Dデジタルソリューションを提案する日本3Dプリンター株式会社技術メンバーです。
        3Dプリンター/3Dスキャナーのエキスパートとして、皆様に有益な情報を発信していきます。

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